2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本における産学連携のアメリカモデルの導入とその変容:カナダの事例との比較から
Project/Area Number |
17530615
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
藤墳 智一 University of Miyazaki, 教育研究・地域連携センター, 准教授 (30248637)
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Keywords | 高等教育 / 産学連携 |
Research Abstract |
知的財産権に関する規制緩和と技術移転のための中間組織が産学連携のアメリカモデルの最大の特徴である。1990年代、それを導入しようとした我が国の政策では共同研究と特許による技術移転が重視され、ノウハウに関する知識の移転や人材交流などは必ずしも優先されなかった。例えば、政府の白書や各大学の報告書は技術移転活動から得た収入の増加を繰り返し紹介し、産学連携の成果として特許による研究の商業化を強調した。しかし、アメリカの改革における主たる課題はむしろリエゾン活動による情報交換の活性化にあった。 国立大学に関する事例研究では、特許マネジメントを重視する産学連携政策に積極的に適応したのは大規模大学であり、小規模大学は地場産業との交流を重視したという実態が明らかになった。アメリカモデル導入に対するこうした受け止め方の違いには財政状況、研究者集団の規模、過去の技術移転の経験、地場産業の技術力などが影響している。つまり、これは個々の大学が条件の違いに応じて異なる戦略を選択した結果だと言うことができる。 カナダでは大規模大学と小規模大学との違いがさらに明確であった。大規模大学では生命科学分野を中心に多くの大学発ベンチャーが創出されているのに対して、小規模大学の関心はもっぱら教員の意識改革と地場産業との交流にあった。特定のリーダーが学内の制度設計により大きな権限を長期間維持しており、このことが戦略の違いをいっそう明確にしたのだと考えられる。 本研究の特色は、大学内における技術移転ユニットの発展に着目し、戦略的経営の視点から国立大学の行動を分析した点にある。その結果、技術移転の組織と方法について機関の間には大きな多様性が認められた。これは法人化による規制緩和がもたらした新しい現象の一つだと言える。
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