2007 Fiscal Year Annual Research Report
EUにおける中国系第二世代の学校適応に関する教育人類学的研究
Project/Area Number |
17530622
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山本 須美子 Toyo University, 社会学部, 准教授 (50240099)
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Keywords | 教育人類学 / 学校適応 / 中国系第二世代 / EU / アイデンティティ形成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、EU(特にイギリスとフランス)における中国系移民の第二世代を対象に、文化人類学的な現地調査を行ない、中国系第二世代の主流社会の学校への適応の実態とその要因を解明することであった。 平成19年度は、これまでの2年間の研究を踏まえた上でのまとめの1年として、日本語論文2本と英語論文1本の成果を発表した。以下、得られた新たな知見である。 1.異文化の共存という課題に対して言説レベルでは異なっているイギリスとフランスであるが、実際の正規の学校において中国系の子どもが受けている文化的背景に配慮した教育にはそれ程大きな違いがないことがわかった。また、両国の正規の学校における中国語教育とは、中国系の子どもの背後にある様々な中国語方言に代表される家庭文化の差異を消去し、簡体字とピンインによる北京語によって統一していく方向性を示していた。 2.イギリスとフランスの中国系第二世代の学校での成功は、第二世代のインタビュー調査から聞き取った、第一世代と第二世代に共通する、成功のためには学業成績を重視する「成功の民俗理論」の共通性によって説明できた。これによって、両国の中国系第二世代の高い学業成績は、中国的な文化的価値に還元できないことが指摘できた。 3.イギリスとフランスの20歳代を中心とする中国系第二世代へのインタビュー調査の結果から、多文化主義を主流の言説とするイギリスよりも、移民の「統合」を理念として掲げるフランスの方が、主流社会の一員として自らを位置づける者が少なかった。それがなぜなのかは、複合的な要素が絡み合っているが、一つの理由として、フランスの中国系第二世代は親が東南アジアで生まれ育っていても中国人としての意識を持ち、渡仏後も家庭では中国語を話し、子どもに中国人としての意識を持って教育したことが指摘できた。
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Research Products
(5 results)