Research Abstract |
数学教育における直観幾何と論証幾何の接続に関して,本年度,直観幾何と論証幾何の接続に必要なカリキュラム開発に関する考察と,論証幾何の方法知として証明の認識に関する考察の2点に取り組み,次の成果を得た。 ●直観幾何と論証幾何の接続に必要なカリキュラム開発に関する考察 中学第1学年図形領域「空間図形」は,直観的な判断と論理的な判断の差異が明確になる教材が多くある。そのため,直観幾何と論証幾何の接続に必要なカリキュラム開発に適した単元である。そこで,直接証明と間接証明の素地を形成するため,新たな教材を導入し,指導展開案を作成した。新たな教材のなかには,たとえば,立方体の切断面の形状について考察するとともに,その形状になる理由,あるいは,ある形状になることはあり得ない理由を立方体の諸性質に基づき説明するものなどが含まれている。 ●論証幾何の方法知としての,証明の認識に関する考察 証明の価値や意味を感得できるようになるために,証明の学習では,証明をつくる活動ともに,証明をよむ活動が主に展開される。そして,これらの活動を通じ,子供による証明の認識は意図されたレベルにまで次第に高まっていく。ただ,子供が証明を数学的実体として認識できるようになり,論証幾何の方法知としていかすことができるようになるのは容易なことではない。そこで,子供が証明を認識できるまでに経る過程や段階について考察した。その結果,学校数学において,子供が対象として証明を認識できるようになるまでに,次の諸相を設定できることがわかった:全体的な認識,部分的な認識,局所的-関係的な認識,メタ関係的な認識。
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