Research Abstract |
本年度は,統合的な学習領域『モデリング』のカリキュラムを開発するために,中学校数学科・理科・技術科を横断可能な領域として,PISA調査(OECD生徒の学習到達度調査)の「不確実性」領域に着目した。そして,この領域の教材開発が先進的に進められ,PISA調査で一定の成果をおさめているオーストラリアの教科書(南オーストラリア州,第5学年-第10学年)を分析した。 その結果,第8学年で,「統計的探究」として,6ステップが明記されており,理系教科で扱われる事象とともに,それ以外の事象についても,統計的な手法でモデリングの教材化がなされていることがわかった。 また,第5-7学年では,「統計的探究」の準備となる教材が適切に配置され,第9-10学年では,「統計的探究」を活用し,中心をはかる指標(平均値,メジアン(中央値),モード(最頻値))やデータの散らばりをはかる指標(四分位範囲,上位・下位四分位数など)への理解を深めるとともに,これらをいかした整理の仕方として,箱ひげ図及び五数値整理(最小値・下位四分位数・メジアン・上位四分位数・最大値)が扱われていることがわかった。 残された課題は,「統計的探究」を統合的な学習領域『モデリング』のカリキュラムとして,どのように理論的に位置付けていくか,教科書分析によって収集した教材をカリキュラムとしてどのように配置していくか,そして,我が国の児童・生徒に応じた教材として,新たに開発すべき教材は何であり,それをどのように配置していくかである。
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