Research Abstract |
本研究は2年間継続してきており,昨年度に開発されたものづくりを中心とした体験型学習題材を精選した上,さらに幼稚園児・小学生・中学生のそれぞれ発達段階を視野に入れ,系統性を重視し,身近で,リサイクル可能,かつ加工しやすい材料を選定し,ユニークな加工技術,チャレンジ精神の育成が図られる製作題材として,圧縮木材でストラップ飾り,県産材でスパイスラック,ヒノキ板で円形木琴,アルミカンで笛,アクリル板でキーホルダー,ペットボトルで動くおもちゃ,ケナフでアクセサリー,布でコースター,布でティッシュケース,アイロンビーズ,フェルトでアクセサリー,紙で鍋敷きダストスタンドの計12種を考案し,難易度の多様化と内容の充実を図った. 夏休み期間中の土曜日を利用して,熊本県伝統工芸館で「くまもとものづくりフェア」を開催し,大学教職員と学生・院生,技術・家庭科現職教師,熊本県技能士会員,EMS社員,伝統工芸館ゆずり葉の会のメンバーで総勢60人から,共同技術指導体制を作り上げ,来場者920人のものづくりイベントを成し遂げた.ものづくりフェアの企画運営から学生を参加させ,オフキャンパスで行われる技術教育の実践活動を通して,基礎知識と基本技能の定着を促し,技術的課題解決能力を養い,責任感を強め,教員養成における技術教育指導者の資質向上を確実に図った.特に,ものづくりフェアの実施期間中,教員養成大学と中学校の現職教師間の連携が図られ,他団体との交流・協力による地域教育力の向上に期待が持てた.さらには,幼稚園・小学校段階から,ものづくりに親しませ,興味関心の増進に留まらず,製作に関わる知識と技能への学習意欲の喚起,中学校技術・家庭科の教育基盤作り,技術的課題解決能力の系統的な育成においても教育的な意義が大きい. 一方,国際水準を視野に入れたカリキュラム開発は,先進国の事例研究が欠かせない.今年度では,本学と交流協定が締結されているカナダアルバータ大学教育学部を訪問し,日本のものづくり教育の現状と課題,ならびに本研究の取り組みをプレゼンテーションした上,アルバータ州教育庁,エドモントン市公立学校局の関係者と懇談し,技術教育のカリキュラム開発と実施状況,教員養成関連の諸問題について活発に討議し,意見交換を行った.また,エドモントン市の公立学校を訪問し,技術教育の授業を数多く見学し、教師と学生との交流も実現できた.カナダのものづくり技術教育における取り組み,カリキュラムの開発と充実,Plan-Do-Seeの授業実践など,たくさん有益な情報は,今後のものづくり技術教育の推進に非常に有意義である. 最終年度の次年度では,ものづくり教育を中心とした交流学習型・地域連携型の「総合演習」カリキュラムのさらなる充実を図り,地域に根ざした技術教育の教員養成に寄与したい.
|