Research Abstract |
今年度中に発表された論文のうち,最も主要な成果は,高々16個の4乗数の和で表せない自然数を完全に決定することに成功したことである.とくに我々が寄与した部分は,10の216乗以上で,かつ16で割り切れない自然数はすべて16個の4乗数の和として表せる,ということを円周法によって証明したことである.高々19個の4乗数の和で表せない自然数がないことについては1993年に完全な証明が発表されたが,我々の成果は,それを上回り,高々18個,高々17個,高々16個の4乗数の和で表せない自然数を,それぞれ完全に特定した.さらに,副産物的なものであるが,高々19個の4乗数の和で表せない自然数がないことの証明をも,大幅に簡易化することができた. また,3乗数のワーリング・ゴールドバッハ問題について,以下の成果を得た.7個の3乗数の和で表せない自然数は有限個しかないことが知られているが,9で割り切れない奇数に限ると,7個の素数の3乗の和に制限しても,この形で表せないものは有限個しかないであろうという予想があり,この予想に向けて,7個の概素数の3乗の和について考察する研究がなされてきた.実際,1995年には,高々69個の素因数しか持たないような自然数の3乗に限定しても,そのようなもの7個の和で表せない自然数は有限個しかないことが示された.今回,我々はその限界69を,4にまで小さくすることができた.つまり,充分大きい自然数は,高々4個の素数の積となる7個の数の3乗の和として表せることを証明した.これは,円周法と篩の方法を合わせて使う技術により,得られた結果である. 今年度の前半で得られた成果については,2005年10月に京都大学数理解析研究所で開かれた研究集会「解析的整数論」において,研究代表者である川田が口頭で発表を行った.今年度全体の研究成果については,2006年4月にモントリオール大学で開かれる研究集会"Additive Combinatorics"において,川田が口頭発表を行う予定となっている.
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