Research Abstract |
ここ数年,代数幾何におけるトーリック多様体論をトポロジーの観点から展開した理論の構築を行って来た.時を同じくして,イギリス,ロシアでも同様の観点からの研究が始まり,トーリックトポロジーと呼ばれる新しい分野が生まれつつある.本研究では,Panov氏,呂氏らと共に,トポロジーと組合せ論との関連を主に研究し,この新しい分野の発展に力を注いだ.特に,平成18年度には,5月末から1週間,「トーリックトポロジー」と題した国際会議を大阪市立大学で開催した.組織委員は,日本学術振興会の外国人特別研究員として来日していたモスクワ大学のPanov氏,トロント大学の原田芽ぐみ氏,Yael Kashon氏の4名である.経費としては,21世紀COEプログラム「結び目を焦点とした広角度の数学拠点の形成」からの援助,松元重則氏の基盤(A),Panov氏の研究費,橋本義武氏の研究費,および本研究費を充てた.幸い,国外,国内からそれぞれ70名の参加があり,盛況であった.多くの人が,新しく生まれつつあるこの分野に感心があることが窺い知れた. 個人の研究としては,以下の成果があった. (1)Guillemin-Zaraにより,トーラス多様体のトポロジーとグラフ理論との関係が調べられている.これは,グラフ理論の研究に同変トポロジーのアイデアを導入したもので大変興味深い.我々の研究では,トーラス多様体に対応するトーラスグラフという概念を導入し,その同変コホモロジー環が,可換環論で導入されているsimlicial posetのface ringになることを示した.論文は,Adv.Math.212(2007)pp.458-483. (2)同変コホモロジーはトーリック多様体の情報を多く含んでおり,トーリック多様体の研究に非常に相性がよいことが知られているが,本研究で,同変コホモロジーがトーリック多様体を完全に決定する事を示した.論文は投稿中. (3)トーリック多様体の例として,CP^1束を繰り返して得られるBott towerと呼ばれるものがあるが,Panov氏とこれらの位相的な分類に取り組んだ(論文投稿中).また,Suh氏と,Bott towerを拡張したhigher Bott towerの位相的な分類に取り組んだ(論文準備中).
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