2008 Fiscal Year Annual Research Report
低温天体(褐色矮星及び赤色巨星)における分子及びダストの雲形成過程の分光学的研究
Project/Area Number |
17540213
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 隆 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 名誉教授 (20011546)
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Keywords | 光球大気構造 / 赤外線スペクトル / 赤色巨星 / 成長曲線 / 外層大気構造 / 質量放出 / 褐色矮星 / 化学的非平衡 |
Research Abstract |
昨年までの研究により、M型巨星の赤外スペクトルに観測される分子線スペクトルにおいては、弱いスペクトル線は古典的なスペクトル線形成理論で理解されるが、中間強度のスペクトル線はこれでは理解できず、複合的な大気構造を考える必要が明らかとなった。この問題をさらに解明するため、最も分光データの完備しているK型巨星Arcturusの高分解能スペクトルの解析を行った。その結果、従来から古典的光球モデルにより解析されてきたCO陪振動によるスペクトル線においても、ある強度でその性質が急激に変化し、これら中間強度のスペクトル線は従来の方法では解析できないことが明らかとなつた。このことは、成長曲線を作ってみるとこれら中間強度の線は従来の古典的成長曲線にはのらず、これから上方に折れ曲がる新しい系列を作ることが明らかとなった。このような成長曲線の異常は、すべてのM型巨星にも見られることが明らかとなった。これらさらに5ミクロン領域に観測されるCO基準振動は異常な振る舞いを示し、これらスペクトル線は光球大気モデルはもとより、熱い彩層モデル、さらには所謂2層モデルによっても全く説明できないことが明らかとなった。これらのことは、これらCO基準振動線の成長曲線はさらに大きな折れ曲がりを示すことにより明瞭にしめされる。これらの結果を説明するためには、従来の古典的光球モデルは無力であり、なんらかの複合的モデルが必要であろう。従来、恒星大気は雲ひとつない快晴と考えてきたが、上記結果はこれら恒星大気にも分子の雲が生成して複雑な複合的大気構造を形成しているとするモデルを提唱した。Arcturusについては、これを簡単な分子雲殻モデルを考え、数値シュミレーションにより観測結果が再現できることを示した。
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Research Products
(3 results)