2005 Fiscal Year Annual Research Report
恒星の化学組成解析による銀河系の形成・化学進化の研究
Project/Area Number |
17540218
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
比田井 昌英 東海大学, 総合教育センター, 教授 (90173179)
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Keywords | 銀河系 / 恒星分光学 / 化学組成 / 化学進化 / 恒星種族II / 核合成 / 金属欠乏星 / 金属富裕星 |
Research Abstract |
本年度の研究計画に基づいて、金属度-4から+0.5の領域における、ハロー星、厚円盤星、薄円盤星の観測データを用いてα元素の硫黄と、鉄族元素の亜鉛について振る舞いを調べた。以下にその概要を述べる。 (1)金属度-4から-1.5における硫黄組成の振る舞いを、Keck I望遠鏡のHIRESにより観測された15星のSI(1)線のデータに基づき解析した。その結果、硫黄は平均約+0.5dexの超過を持って、この金属度領域ではほぼ平坦な傾向を示すことが判明した。この結果は、IAU Symposium 228の集録論文として発表されている。 (2)金属度-1から+0.5における硫黄組成の振る舞いを、岡山天体物理観所のHIDESにより得られた惑星を持つ恒星約30星と持たない恒星120星のデータベースを利用して、調べた。その結果、惑星を持つ恒星と持たない恒星に於ける硫黄の振る舞いには差が無いこと、金属度が0より大きい領域では[S/Fe]〜-0.1周りに分布する平坦な傾向を示すこと、が判明した。この結果は、日本天文学会2005年秋季年会で発表した。 (3)上記(2)で用いたデータベースに基づき、亜鉛の振る舞いを調べた。その結果、硫黄と同じく惑星を持つ恒星と持たない恒星に於ける亜鉛の振る舞いには差が無いことが判明したが、硫黄と異なり、ほぼ太陽値で平坦な傾向を示すことが判明した。 (4)金属度-3から0までの領域における亜鉛の振る舞いを調べるために、岡山天体物理観所のHIDESにより得られた約40星のデータを解析した。我々の結果と従来の研究結果に基づいて、亜鉛[Zn/Fe]は0から-2の金属度領域で太陽値周りに分布する平坦な傾向を示し、-2以下では金属度減少と共に太陽値より増加する傾向を持つことが判明した。この結果は、共同研究者が国際シンポジウム(Origin of Matter and Evolution of Galaxies)で発表した。 (5)現在知られている最も鉄組成が少ない恒星HE1327-2326の元素組成解析が行われた。[Fe/H]=-5.45であることが確定し、-4から-5の金属度を持っ恒星が存在しないかもしれないことが示唆された。また、この星は炭素が極端に超過しており、他の軽元素もかなりの超過を示すことが判明した。しかし、リチウムが少ないという謎が残されている。この結果は、Astrophysical Journalに投稿されて印刷中である。また、国際シンポジウム(Origin of Matter and Evolution of Galaxies)でも発表された。
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Research Products
(3 results)