2006 Fiscal Year Annual Research Report
銀河団進化過程における衝撃波と乱流磁場による宇宙線の加速
Project/Area Number |
17540219
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Research Institution | Yamagata Junior College |
Principal Investigator |
大野 寛 山形短期大学, 総合文化学科, 助教授 (70320611)
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Keywords | 宇宙物理 / 天文 / 物理天文学 |
Research Abstract |
銀河団進化過程における粒子加速過程を明らかにする研究を行っている. 銀河団では,アルヴェン波や磁気音波からなる乱流磁場が効果的に宇宙線粒子を加速している可能性がある.本年度は特に,アルヴェン波による粒子加速の素過程に着目して研究を行った. アルヴェン波による粒子加速は,波と粒子の共鳴相互作用によるエネルギー拡散であり,加速効率はエネルギー空間での拡散係数D_<γγ>で決まる.準線形理論によると拡散係数には,波数k≧k_<res>〜2π/(ジャイロ半径)のアルヴェン波が寄与する.一方で,k<k_<res>の波も粒子散乱に寄与することが予想できる.そこで,テスト粒子シミュレーションを用いて,低波数(k<k_<res>)がエネルギー空間の拡散係数に影響するか調べた. テスト粒子シミュレーションは,電磁場を仮定し,粒子の運動方程式を解く方法である.今回,電磁場としてアルヴェン波の分散関係を持つ波を仮定した.多くの波数の波を重ね合わせることで乱流磁場を表現した.各波数の波の強度はパワーローで仮定した. はじめに,ローレンツ因子γ=2を持つ電子のエネルギー拡散を調べた.波数k≧k_<res>/4に背景磁場エネルギーの30%程度を与えた場合,D_<γγ>/Ω_<eO>〜6×10^<-6>程度の拡散を示した.これは,準線形理論で予想される値の数倍にあたり,低波数のアルヴェン波がエネルギー拡散に影響していると考えられる. 次に,銀河団を想定し,γ=10000を持つ電子について調べた.背景磁場エネルギーの0.003%程度を,k≧k_<res>/60に相当する波数領域へ与え実験を行った.計算を行ったシミュレーション時間では,拡散が定常に達しなかったが,準線形理論で予想される拡散係数の数倍を得ている.今後の研究でこの拡散が加速につながるか調べていきたい. 以上について,日本天文学会(2007年春季年会)で報告した.
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