2006 Fiscal Year Annual Research Report
南極周回バルーンによる宇宙線原子核観測データの解析
Project/Area Number |
17540226
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
市村 雅一 弘前大学, 理工学部, 助教授 (20232415)
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Keywords | 宇宙線原子核 / 長時間気球 / 遷移放射 / エネルギースペクトル |
Research Abstract |
本研究では、シカゴ大学と共同で重一次宇宙線の長時間気球観測を行い、その観測データから、銀河宇宙線の加速・伝播機構に関する情報を得ることを目的としている。この実験で用いられている検出器は、遷移放射を用いて重一次宇宙線のエネルギーを測定する新しいタイプのものでTRACER検出器と呼ばれている。平成18年度は2度目の長時間観測の準備、実施、観測データの初期解析を行った。 まず、観測に備えて既存の検出器の大幅な改良を行った。TRACER実験で用いている検出器には、プラスチックシンチレータ、チェレンコフカウンタ、比例計数管、遷移放射検出器などが層状に組み込まれている。このうちチェレンコフカウンタは従前ては検出器の底に1層だけ挿入されていたが、これを最上部にもう1層追加した。これによって低エネルギー粒子の判別や電荷分解能の向上をはかった。また、チェレンコフカウンタ、シンチレータの読み出しに使用する光電子増倍管の本数をすべての層で24本とした。更に、データ読み出しの電子回路系を大幅に入れ替え、比例計数管、光電子増倍管ともにシグナルのダイナミックレンジを大幅に拡大した。 改良型の検出器を用いて2006年7月にスウェーデンから長時間観測を行うべく、検出器を搭載した気球を放球した。計画では北半球を一周して10日以上の観測を行う予定だったが、ロシア上空を飛行する許可か得られないこととなり、残念ながら4日半の飛行で観測を終えた。観測時間は予定よりも短かったが、観測データの初期解析を行ったところ、これまで観測できていなかったホウ素核がきちんと観測されていることが確認できた。これは検出器の動的範囲を改良した成果であり、これにより宇宙線伝播機構を解明するために重要なホウ素核/炭素核存在比のデータを算出することが可能となった。今後、この検出器を用いて、再度長時間観測を行う予定である。
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