2006 Fiscal Year Annual Research Report
合体する連星中性子星に対する現実的かつ完全に一般相対論的解析
Project/Area Number |
17540232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80252576)
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Keywords | 一般相対論 / 中性子星 / ブラックホール / 重力波 / ガンマ線バースト |
Research Abstract |
連星中性子星の合体は、現在稼働中の重力波検出器に対する最も有力な重力波源であるとともに、ガンマ線バーストの中心エンジンを誕生させる現象としても有望視されている。本研究の目的は、現実的な状態方程式を用いて一般相対論的数値シミュレーションを実行し、連星中性子星の合体の様子、合体時に放射される重力波の波形、合体後に誕生する天体(中性子星またはブラックホール)の性質などを解明することである。これまでも、連星中性子星の合体については調べられてきたが、状態方程式が簡略化されたものであったり、一般相対論の効果が無視されていたり、あるいは合体を調べるには初期条件が現実的でなかったりといった欠点があった。本研究では、現在最も現実的と呼ばれる状態方程式および初期条件を用いて一般相対論的シミュレーションをした。そして以下のような結果が明らかになった。(1)連星中性子星の合計の質量が太陽質量のおよそ2.8倍を越えると、合体後にブラックホールが誕生する。この結論は、2つの中性子星の質量比にはよらない。(2)質量が小さい場合には、高速回転する大質量の中性子星が誕生する。高速回転のため楕円形に変形しているのが特徴である。(3)2つの中性子星の質量が異なる場合、誕生する中心天体の周りに円盤が形成される。その質量は質量比によるが、例えば、3対2程度の場合には、太陽質量の数%程度である。ただし温度は約1000億度、密度は単位立法cmあたり約1兆グラム程度と高温かつ高密度である。(4)ブラックホールが誕生する場合、最終的にブラックホールの準固有振動に付随した重力波が発生する。ただし、振幅は小さく銀河系内などごく近傍で発生しない限り観測するのは難しいと考えられる。中性子星が誕生する場合、楕円体形状が高速回転するので、高周波(3kHz程度)の準周期的重力波が発生する。これは高振幅をもつので、advanced LIGOやLCGTといった次世代重力波検出器で観測されるかもしれない。(5)質量比が異なる連星が合体するとブラックホール周りに降着円盤が誕生しうるので、ガンマ線バーストの発生源になるかもしれない。 なお、連星中性子星の合体の計算を発展させて、ブラックホールと中性子星の合体の数値シミュレーションにも着手した。
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