2007 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論の有効理論の構造とμ問題のTEV領域解の研究
Project/Area Number |
17540246
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
末松 大二郎 Kanazawa University, 自然科学研究科, 教授 (90206384)
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Keywords | 超弦理論 / 超対称性 / μ問題 / 暗黒物質 / ニュートリノ / CP対称性の破れ |
Research Abstract |
超対称模型に内在するμ問題は,理論的課題に止まらず,超対称模型の現象論的諸性質全般と密接な関係を持つ。今年度は,暗黒物質とμ問題の関連,μ問題の解決に優位な性質を持つ超対称性の破れに伴なって現れるCPの破れのもたらす現象論的効果等を中心に研究を進めた。本研究において得られた主たる成果の概要は以下の通りである。 1.TeV領域に付加的U(1)ゲージ対称性を持つ模型は,μ問題に自然な解決を与える。このような模型ではニュートラリーの部分が拡張されることから,最小超対称模型で予想される暗黒物質の候補とは異なる性質を持つ暗黒物質が可能となる。この暗黒物質の候補について,WMAPの観測結果を再現するパラメータ領域を調べ,その領域において,LHCで測定され得る物理量に対する予想を与えた。さらに,模型をニュートリノ質量の説明が可能となるように拡張することで,暗黒物質,バリオン数の起源,ニュートリノ質量の間に密接な関連が存在する模型の可能性を調べつつある。 2.ゲージ相互作用により超対称性の破れを媒介する模型では,FCNCが強く抑制されるなど現象論的に望ましい性質を持つ一方,μ問題が深刻な問題として残る。この最小模型をμ問題の解決を容易にするように拡張すると,ゲージーノ質量に物理的CP位相が残存し,電子や中性子の電気双極子能率の実験的制限に抵触する可能性が生じる。この問題について,ゲージーノ質量が物理的CP位相を持つ場合には,他の超対称性の破れのパラメータが大きなCP位相を持つ場合にも電気双極子能率の実験的制限と矛盾しないことがあり得ることを示し,その場合のヒッグス質量などの評価を与えた。さらに,この模型におけるCP位相のLHC実験における検証可能性について検討を進めつつある。
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Research Products
(3 results)