2008 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論の有効理論の構造とμ問題のTeV領域解の研究
Project/Area Number |
17540246
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
末松 大二郎 Kanazawa University, 数物科学系, 教授 (90206384)
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Keywords | 超弦理論 / 超対称性 / μ問題 / 暗黒物質 / ニュートリノ / CP対称性の破れ |
Research Abstract |
暗黒物質とニュートリノ質量の存在は、標準模型の拡張を迫っている。今年度は、これらを同時に説明する可能性を持つニュートリノ質量を輻射補正により生成する模型において、暗黒物質の候補に関連する現象論的諸性質の解明を中心課題とし、研究を進めた。本研究において得られた主たる成果の概要は以下の通りである。 1. 標準模型に、SU(2)の2重項スカラーと1重項ニュートリノを加えた模型は、輻射補正により、ニュートリノ質量を生成するとともに、暗黒物質の候補を与える。この模型において、ニュートリノ振動実験結果を説明し、かつレプトンフレーバーを破る過程からの制限を満たすという条件の下、暗黒物質残存量に対するWMAPの観測結果を再現するパラメータ領域を調べ、その領域でLHCで測定され得る物理量に対する予想を与えた。 2.1.の模型は、レプトン数の非対称性の生成を通してバリオン数の起源に対する説明をも与える可能性を持つ。この可能性が実現されるために要求される模型の拡張について調べ、望まれるバリオン数を生み出すために必要となるパラメータ領域を特定した。 3.1.の模型は、ゲージ階層性問題には何らの解答も与えてくれない。この問題を解決するための可能性として、模型が持つニュートリノや暗黒物質に関する性質を失うことなく、超対称性化することが考えられる。E6ゲージ群に基づく模型の超対称性化を考え、模型におけるニュートリノ質量生成や暗黒物質について解析を進めた。 4. 標準模型にSU(2)の3重項をなすフェルミオンを加えた模型におけるニュートリノ質量の生成と模型に含まれる暗黒物質の残留量の評価を行い、この模型がニュートリノ質量と暗黒物質の存在を同時に説明する模型の候補となりうることを示した。また、ゲージ結合定数の統一などに現れる模型の他の現象論的特徴についても検討した。
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