2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
鈴木 敏男 福井大学, 工学部, 教授 (80115865)
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Keywords | 相対論的模型 / ガモフ・テラー和則 |
Research Abstract |
和則は物理学の広い分野にわたって重要な役割を果たしている。それは理論を構築する基本的な仮定にのみ依存し、その枠の中での色々な模型によらずに成立すべきものであるからである。したがって、実験的にその破れが判明すれば、理論の基本的な仮定から再構築しなければならない。特に、現象論的な段階にある原子核理論物理学では、和則は理論を構築する上で特に重要なものである。 現在、原子核をよく説明する現象論的模型として、相対論的なものと非相対論的なものがある。前者は、非相対論的な近似で後者に帰着せず、両者は原子核に異なる物理像を与える。特に、相対論的模型では、相対論的効果が非常に大きく、無視できない。我々はいずれが現実的な原子核模型かを明らかにする目的で、相対論と非相対論における和則を研究対象とした。 本年度は、特に原子核のガモフ・テラー遷移に関する和則を取り上げた。非相対論における和則は40年前からよく知られ、原子核のスピンに依存する構造研究で中心的な役割を担ってきた。非相対論では、原子核の中性子数と陽子数の差で与えられる和則値を、全て核子の自由度が担っている。一方、我々が導いた相対論における和則では、和則値は変わらないものの、それらを担うものは核子だけでなく、反核子の自由度も担っていることを示した。しかも、反核子が担う和則値の一部は実験的に観測不可能であることを示した。このことは、相対論と非相対論では実験値に差があることを意味している。これらの計算では、反核子による発散の繰込みを完全に考慮する方法を開発し、原子核模型における反核子の役割を明らかにするとともに、今まで多くの研究者が無視してきた反核子の自由度の重要性を示した。
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