2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540254
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Research Institution | Okayama Institute for Quantum Physics |
Principal Investigator |
二宮 正夫 Okayama Institute for Quantum Physics, 所長 (40198536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川合 光 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80211176)
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Keywords | 量子重力 / 超弦理論 / 非摂動的研究 / LHC / hole theory / duality / world sheet / gauge theory |
Research Abstract |
量子重力は、一般相対性理論と量子力学とを合流させた量子力学的一般相対性理論のことである。しかしながら長年多くの人の研究の結果、単に一般相対性理論を量子化しただけでは矛盾のない理論は出来上がらない。最大の問題は上のようにして構成した理論を用いて、ある散乱振幅、たとえば2つの重力量子(グラビトン)同士の散乱振幅を定数のべき展開という摂動論によって計算すると高い次数の項は無限大に発散してしまう。これは明らかに非物理論な結論であって、この理論はくりこみ不可能である。このためアインシュタイン-ヒルベルトの一般相対性理論をすて去り、くりこみ可能な新たな理論を構成する必要がある。現段階においては、このような重力の量子論の最も有力な理論は、超弦理論である。超弦理論においては通例の場の量子論においては粒子が基本構成要素であるのに反し、一次元的なひろがりをもった紐である。 この超弦理論は、また自然界の4つの基本的力;弱い力、電磁気力、強い力、重力のすべてをひとまとめに記述する素粒子の統一理論を構成していることが判明している。この超弦理論は宇宙誕生直後の時空に適用されるべきもので、従って地上におけるLHC等既存のもの、あるいは将来計画として期待されるILCなどの超高エネルギーの粒子衝突型実験においては験証できない。唯一の験証可能な実験は宇宙超初期の観測である。 そこで二宮と川合は共同で、福間准教授と共同で、超弦理論のいくつかの仮定だけを用いてモデルを構成し、それがもたらすいくつかの予言を求めた。実際このモデルでは、現在の宇宙の前に30〜50回の宇宙の生成消滅があったという結果が生じた。我々はさらにこのモデルのインフレーション期の性質を探求し、インフラトン(仮想粒子)を導入しなくてもインフレーションが発生することを見出した。さらに、WMAPやCOBEが観測した宇宙の密度等のゆらぎが我々のモデルから生じることを示した。 二宮は、一方、NBIのニールセン教授と、LHCにおけるCausalityのテストの可能性をくわしく研究した。 川合は自ら提唱したIIB行列理論を用いて様々な非摂動的な量を導出した。
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