2006 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー電子線励起による半導体表面構造の不安定性
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17540295
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金崎 順一 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (80204535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷村 克己 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00135328)
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Keywords | 半導体表面 / 低エネルギー電子線 / 水素終端表面 / 水素原子脱離 / 電子励起 / トンネル顕微鏡観察 / 結合切断 / ダングリングボンド |
Research Abstract |
本年度は、Si(001)-2x1:H表面を用い、低エネルギー電子と半導体表面との相互作用に関する研究を行った。この表面では、トンネル顕微鏡(STM)探針からの電界放出電子によるSi-Hボンドの結合(σ)-反結合(σ*)状態間励起をトリガーとするSi-Hボンド切断機構が提唱されている。しかしながら、局所的高密度励起による多重励起効果や探針-表面間の強い電場に起因するシュタルク効果など、探針が脱離過程に及ぼす影響を完全に除去するは不可能である。本研究では、励起源に高エネルギー分解能の電子線を用い、探針効果を完全に除去した条件で電子線誘起Si-H結合切断の実験を行った。 電子線照射前後の表面をSTM観察し、H原子脱離に伴って発生する表面Siダングリングボンド(DB)の形態とその表面数密度を統計的に解析した。その結果、表面Siダイマーを構成する一方のSi原子のみにDBをもつsingleDBが主要な生成物であり、水素原子終端ダイマーにおける単一H原子のボンド切断が主要な過程である事が明確となった。DB密度は照射ドーズ量と共に増大するが、数パーセントの密度で飽和する。この結果より、電子線照射下において、DB生成と水素原子によるDBの再終端が競合して起こっている事を初めて実証した。励起によるDB生成項とDB密度に比例して水素終端される項を考慮してDB生成カイネティクスを定量的に解析した。異なる励起強度(10-60nA)及び電子線エネルギー(5-15eV)の結果を解析し、DB生成効率は励起強度に比例することが明らかとなり、一次の過程でSi-H切断が発生する事がわかった。電子銃と試料との接触電位差を考慮すると、今回の電子線エネルギーによりσ→σ*遷移を誘起することが十分可能であり、この電子遷移に起因するSi-H切断が発生していると考えられる。また、再終端化の効果を除去した電子線による真のDB生成断面積は電子のエネルギーに依存せず、1.3x10^<-20>cm^2であった。
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Research Products
(4 results)