2005 Fiscal Year Annual Research Report
フェルミオン-ボゾン相互作用を通じた量子コヒーレント過程による固体表面構造操作
Project/Area Number |
17540299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河合 伸 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (60204674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成清 修 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (60252631)
吉本 芳英 東京大学, 物性研究所, 助手 (80332584)
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Keywords | ゲルマニューム / 固体表面 / 構造操作 / 走査トンネル電子顕微鏡 / コヒーレント / 微分コンダクタンス / モデルポテンシャル / 温度 |
Research Abstract |
STM観測下でのGe(001)表面安定構造の入れ替わりを明らかにするために、STM TIPによる表面印加電場の効果が取り入れられたダイマー配列系のモデルポテンシャルを開発した。そのモデルポテンシャルを用いることにより、Ge(001)表面構造操作にヒステリシスが現れる機構について、定量的に明らかにした。 コヒーレント励起レートに自己エネルギー補正項が重要な役割を果たす。Ge(001)表面で、この項のエネルギー依存性を実験との比較により決定した。決定過程には、吉本によるpi*バンド幅の計算結果が重要である。 導体表面微分コンダクタンススペクトルがTIP先端温度に支配されることを明らかにした。Ge(001)表面コンダクタンススペクトルの解析により実験におけるTIP先端温度を決定した。これは、観測下でのSTM TIP先端温度を決定した世界で初めての例である。 成清は、ランダムに量子ドットが分布する固体表面における電流の温度依存性を新しく提案した現象論的モデルに基づいて議論した。このモデルでは、フェルミオン-ボゾン相互作用から導かれる引力とクーロン斥力による電子間の量子多体効果を考慮している。ランダムさが小さい場合は、量子コヒーレント過程が支配的となり、電流は超伝導的ないし金属的な温度依存性を示す。ランダムさを大きくしていくと徐々にコヒーレンスが破壊され、絶縁体的となるクロスオーバーが見られた。これは、関連する実験を統一的に説明する、はじめての理論的結果である。 吉本はGe(001)表面の低温における表面構造変換の議論を行い、STMによって引き起こされるダイマーの動きについての実験結果の解釈を理論的に明らかにした。また、この表面のpi*バンド幅はこの現象を理解するために重要なパラメータであるが、吉本はそれを第一原理計算によって求めた。
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