2006 Fiscal Year Annual Research Report
フェルミオン-ボゾン相互作用を通じた量子コヒーレント過程による固体表面構造操作
Project/Area Number |
17540299
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河合 伸 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (60204674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成清 修 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (60252631)
吉本 芳英 東京大学, 物性研究所, 助手 (80332584)
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Keywords | シリコン / ゲルマニューム / 表面 / コヒーレント / ダイマー / 構造変換 |
Research Abstract |
Ge(001)表面でのSTMによる定在波観測における減衰距離について、ミクロな量子散乱理論による研究を行なった。実験結果と半定量的な一致を得た。Ge(001)表面では、減衰長を支配しているのは、ダイマー局在振動の励起であることが明らかになった。さらにバンド構造が減衰長に及ぼす効果について明らかにした。その結果を基に、STM装置によるGe(001)表面での量子コヒーレント過程による固体表面構造操作の到達距離について概略的な知見を得た。その結果により、到達距離のバイアス電圧依存性が明らかになった。 Si(001)表面で観測される低速電子線照射による構造変換について、ダイマー局在振動のインコヒーレントラダークライミング過程に基き研究した。構造変換レートの温度依存性は、実験結果をよく再現する。振動励起は間欠的であり、実験で報告されている電子線電流の線形依存性を説明する。この研究結果により、ドーパント種依存性についても予想することができた。 ランダムに量子ドットが分布する固体表面における電流の温度依存性を新しく提案した現象論的モデルに基づいて議論した。このモデルでは、フェルミオン-ボゾン相互作用から導かれる引力とクーロン斥力による電子間の量子多体効果を考慮している。ランダムさが小さい場合は、量子コヒーレント過程が支配的となり、電流は超伝導的ないし金属的な温度依存性を示す。ランダムさを大きくしていくと徐々にコヒーレンスが破壊され、絶縁的となるクロスオーバーが見られた。これは、関連する実験を統一的に説明するはじめての理論的結果である。 Ge(001)表面のダイマー列中のキンクの電子状態密度を第一原理計算で求め、キンクの空状態のエネルギーは、π^*バンドの底よりも高いことを明らかにした。これは、キンクがある条件下でSTMチップの直下に引き寄せられることを説明する可能性がある。
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