2008 Fiscal Year Annual Research Report
フェルミオン-ボゾン相互作用を通じた量子コヒーレント過程による固体表面構造操作
Project/Area Number |
17540299
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河合 伸 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 准教授 (60204674)
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Keywords | 表面 / トンネル顕微鏡 / 半導体 / コヒーレンス / 構造操作 |
Research Abstract |
走査トンネル電子顕微鏡により半導体表面に注入された表面電子バンド伝播電子のコヒーレンス長を決定する新たな表式をもとめた。金属表面では、電子-正孔生成励起によりコヒーレンス長が制限されているが、半導体表面では、そのような励起は支配的ではない。本研究により、半導体表面では、コヒーレンス長を支配する素励起は、表面局在振動状態であることが明らかになった。もとめられた結果は、 Ge(001)表面での定在波観測実験の結果をよく説明する。さらに、 Ge(001)表面では、特定のエネルギーでコヒーレンス長が巨大な長さになりうることを明らかにした。これによりGe(001)表面局在バンドには、大な長さまで電子が伝播できる「エネルギーの窓」が存在しうることが明らかになった。エネルギーの窓は、表面バンドの折り畳みがある一次元的表面局在バンドで広く期待でき、電子注入位置から極めて遠い表面構造の操作の理論的基礎が確立した。 低温Si(001)表面では、低速電子線照射によりダイマー配列の秩序構造が数百秒のオーダーで失われていく。既に、本研究により、これは、表面局在電子状態へ励起された電子による局在振動励起が原因であることを明らかにした。励起電子による、表面局在振動励起に関しては、多くの系で多くの研究がなされてきた。しかし、それらは、全て、調和振動近似のもとで理論研究されてきた。本研究では、低温Si(001)表面ダイマー系で調和近似を行なわないで、振動の固有エネルギー、固有振動状態を量子力学的に求めた。高エネルギー振動状態では、固有状態の調和振動状態へのコンポーネントは広く分布していることを明らかにした。これをもとに、一つの振動オペレーターによる離れたエネルギー準位への遷移が可能であることを明らかにした。これは、従来全く知られていない振動励起過程であり、シリコン以外の多くの表面系で実現する可能性を示した。
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