2007 Fiscal Year Annual Research Report
化合物半導体における動的核偏極と核超偏極状態に関する研究
Project/Area Number |
17540306
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
後藤 敦 National Institute for Materials Science, ナノ計測センター, 主幹研究員 (30354369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 禎 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, グループリーダー (00354366)
端 健二郎 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, 主幹研究員 (00321795)
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Keywords | 半導体物性 / スピンエレクトロニクス / 光物性 / 核磁気共鳴 / 光ポンピング / 動的核偏極 / 交差分極 |
Research Abstract |
本研究の目的は、半導体内における核スピンの動的偏極現象と、その結果生ずる核スピンの超偏極状態の本質を理解することにある。本研究は平成17年度から開始し、18年度までの2年間で超偏極状態における核スピン-核スピン相互作用を研究するためのシステムの開発を行った。これにより、光ポンピング用の近赤外光と核磁気共鳴用の高周波電磁波(2チャンネル)の同時照射を低温・磁場下で実現する「光ポンピング2重核磁気共鳴装置およびプローブ」が完成した。これを受けて、平成19年度は以下の研究を行った。化合物半導体リン化インジウム(InP)の超偏極状態における2重核磁気共鳴の測定と解析化合物半導体中に光ポンピング法によって動的核偏極された偏極核スピン系の局所環境を調べるため、核スピン間の偏極移動のダイナミクスを調べた。具体的には、鉄をドープした半絶縁性リン化インジウムInPにおいて、光ポンピング条件下での交差緩和率の測定・解析を行った。その結果、偏極核スピン系の局所環境の詳細が明らかとなった。 測定には、前年度までに開発したシステムを用いた。鉄ドープInPのウェハ状試料を(100)面が磁場に垂直になるように設置し、円偏光した近赤外光を表面に垂直(磁場に平行)に照射しつつ、リン原子核から115インジウム原子核への交差分極における緩和時間(交差緩和時間:T_<IS>)を測定した。この実験結果について、交差分極スペクトル密度のx成分についてガウス関数を仮定して解析を行った。その結果、T_<IS>は双極子相互作用では説明できないほど短いことが分かった。そこで、電子スピンを介した間接型相互作用(J_<IS>)を導入してさらに解析を進めた結果、kHzオーダーの大きさをもつJ_<IS>の存在を仮定することで実験結果を説明できることがわかった。また、この結果から間接相互作用の異方性についての知見を得ることに成功した。
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