2005 Fiscal Year Annual Research Report
イットリウム系銅酸化物超伝導体における不均一電子状態中の隠れた秩序
Project/Area Number |
17540312
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西嵜 照和 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (90261510)
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Keywords | 銅酸化物超伝導体 / 走査トンネル顕微分光 / ナノ電子状態 / 隠れた秩序 |
Research Abstract |
銅酸化物超伝導体は母体であるモット絶縁体にキャリアをドープした系とみなすことができる.この系の基底状態は,キャリアドープとともに反強磁性絶縁体から超伝導体,通常の金属へと移り変わる.しかし,超伝導が発現する過程のアンダードープ領域に存在するいわゆる擬ギャップ状態の正体は明かではなく,未知の相やナノスケールの電子相分離の可能性について議論が続いている.走査トンネル顕微鏡/分光法(STM/STS)は原子位置を指定して電子状態を直接観察できる手法であり,電子の(隠れた)秩序状態の研究には非常に有効である.本研究では,酸化物超伝導体の典型的な物質の1つであるにもかかわらず表面活性のために研究が遅れているYBa_2Cu_3O_yに関して原子スケールでの電子状態を明らかにするために,次のことを行った. (1)STM測定に用いるための高純度YBa_2Cu_3O_y単結晶の作製を行い,最適ドープからアンダードープまでキャリア濃度を制御した単結晶試料を作製した.また,Cuサイトを不純物置換したYBa_2(CU_xM_<1-x>)_3O_y,(M=Zn,Ni)単結晶の作製を行い試料の評価を行った. (2)STM/STSを用いて原子像(電荷密度像),状態密度,擬ギャップ,超伝導ギャップ,準粒子励起状態の観察を行った.その結果,アンダードープ最表面では不均一な空間分布を持つ電子秩序状態が存在することが明らかになった.来年度は,不均一電子状態中に現われた隠れた秩序の形成に対する不純物と磁場の効果を調べその機構を明らかにする予定である.
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