2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540313
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
簔口 友紀 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (10202350)
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Keywords | ヘリウム / 超流動 / 量子固体 / 一次相転移 / 核形成 / He-4 / 核生成 / 4He |
Research Abstract |
2002年に、報告者によって出版(その後、2006年に改良)された「超流動He-4の過加圧下における固化の有効自由エネルギー」に基づき、過加圧下の固体核生成率を計算した。臨界核の形と核生成のためのエネルギーバリアEbの計算を行うと、特に大きな過加圧の臨界核では、固液境界層が核の大きさに比べて無視できないほど大きくなり、いわゆる薄皮近似(thin wall model=TWM)による計算よりもEbは大きくなる。計算によれば、その比はたかだか倍程度であることがわかった。核生成が熱揺らぎによって起こるとすると、核生成圧はTWMで予想されるものより10bar程度高くなる。この成果は、2006年夏の国際ワークショップ(qfs2006)で発表された。 この理論モデルに対応するBalibarらの実験は、現在まだ進行中であり、いまだ核生成の有無についてはっきりしたことはいえない。すなわち、核生成が起こっていると彼らの主張しているシグナルは、すでに知られている壁近傍での(ヘテロジニアスな)固体核生成のシグナルに比べて大きく鈍っている上に、圧力のキャリブレーションが困難である。彼ら自身は、この困難に対して、新しいテクニックを用いて解決する計画を持っている。 ところで、今回の結果は、密度汎関数理論に基づく(過飽和「古典」液体中の)固体核生成と、定量的に殆ど変わらないことがわかった。この意外な事実は、液体の固化において、量子統計性はほとんど寄与しないことを示している可能性がある。引き続き、フェルミ流体のケースでも考えて見たい。 また、当初予定していた容器壁近傍の核生成に付いては、モデルが固液境界エネルギーを正しく与えず、観測事実の約半分になってしまうことがわかったため、計算を見送っている。モデルの更なる改良を考えたい。
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