2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540313
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
簑口 友紀 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (10202350)
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Keywords | ヘリウム / 固着 / グラファイト / グラフォイル / He-4 / 超流動 / 薄膜 / 固層 |
Research Abstract |
グラフォイルは数百A四方のグラファイト薄片からなる多孔質媒質であり、各薄片は原子レベルで平坦な結晶面である。少量のHe-4を吸着させた場合、最初の二原子層は結晶層、その後は液層が形成されていると考えられているが、吸着量や温度と共にどのような相変化が起こっているかはまだ良くわかっていない。最近その力学的応答について研究が進み、充分低温では、2層目の結晶が1層目に対して滑り運動を行うこと、またより低温で、液層が超流動体となる場合には、滑り運動が止まってしまう事が実験的に明らかにされた。 我々は、前者を固体二重層におけるソリトン(ディスロケーション)運動、後者をソリトンが液層の正常成分を引き摺って動く結果であると考え、後者について二流体模型を構築した。この模型では、ソリトンと液層の正常成分からなる「正常流」と、液層超流動体の「超流動流」が逆位相で振動する新しい温度波が期待できることがわかった。実験で観測される滑り運動の停止は、薄片がほとんど孤立して、励起される音波の波長が薄片の長さ程度であると考えると、少なくとも定性的に説明できることがわかった。 固層の(ディスロケーションの)運動は、吸着平面の原子スケールでの平坦さがあって初めて実現される。こうした系特有の新しい音波を予想し、その理論模型をはじめて提唱したことは言うまでもなく意義深い。例えば、この模型の応用として、観測が困難なディロケーションの運動や散逸を、超流動層をプローブとして観測することが考えられる。また、原子スケールで平坦な面積がより大きければ、温度波を直接観測し得る。そのような広大な吸着表面として、グラーフェン基板に注目したい。 以上の結果は、2008年8月の国際会議(LT25)およびサテライト会議(ULT2008)で報告され、Journal of Physics:Con拓renceSeriesおよびPhysical Review Bに掲載が決定している。
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