2005 Fiscal Year Annual Research Report
スピン揺らぎ・電荷揺らぎ共存型強相関電子系における超伝導に関する理論的研究
Project/Area Number |
17540316
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
黒木 和彦 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (10242091)
|
Keywords | スピン揺らぎ / 電荷揺らぎ / 超伝導 / フェルミ面 / ペアリング対称性 / コバルト酸化物 / 分子性結晶 / FLEX近似 |
Research Abstract |
1.コバルト酸化物超伝導体Na_xCoO_2に対して、α_<1g>バンドを起源とする超伝導メカニズムを提唱した。α_<1g>バンドの特徴的な構造を考慮すると、電子数によっては同心円状の二重フェルミ面が現れうる。このようなバンド構造を取り込み、最隣接サイト間相互作用までを考慮するハバード模型に対して、FLEX近似を適用して、超伝導の可能性とペアリング対称性を調べた。二重フェルミ面が存在すると、スピンの揺らぎの波数は二つのフェルミ面を指し渡すベクトルのところで大きくなる。このようなスピンの揺らぎと、最隣接サイト間相互作用によって生まれる電荷揺らぎが協力的に働いて、非従来型のs波超伝導が出現しうることを示し、種々の実験との整合性を指摘した。 2.分子性結晶θ-(BEDT-TTF)_2XはアニオンXの種類によって絶縁体、電荷秩序状態、超伝導など種々の物性が出現しうる。今年度はまず、θ-(BEDT-TTF)_2MM'(SCN)_4(M=Rb,Cs,M'=Co,Zn)において観測される、特徴的な電荷構造の起源について調べた。物質のバンド構造を考慮し、遠距離までの相互作用を含む模型において、乱雑位相近似によって電荷感受率を計算したところ、実験と整合する波数において電荷感受率が大きくなるためには、第二隣接までの斥力相互作用とフェルミ面のネスティングの両方が重要であることがわかった。このことからわかるように、超伝導になるθ-(BEDT-TTF)_2I_3においても遠距離相互作用が重要となる可能性があるため、遠距離相互作用を含む模型において超伝導を調べることに着手した。
|