2007 Fiscal Year Annual Research Report
スピン揺らぎ・電荷揺らぎ共存型強相関電子系における超伝導に関する理論的研究
Project/Area Number |
17540316
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
黒木 和彦 The University of Electro-Communications, 電気通信学部, 教授 (10242091)
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Keywords | Na_xCoO_2 / Pr_2Ba_4Cu_7O_<15-δ> / 超伝導 / 熱電効果 / スピン揺らぎ / 電荷揺らぎ / フェルミ面 / バンド構造 |
Research Abstract |
1. コバルト酸化物Na_xCoO_2は大きな熱起電力、面内強性面間反強磁性の3次元磁性を示す興味深い物質であるが、CoO_2面間に水分子を挿入することで超伝導にもなる。我々はこれまでに、この超伝導の起源が特異なバンド構造から生まれるスピンの揺らぎと次近接相互作用に起因する電荷揺らぎが協力して生じるものであることを提案し、また、3次元模型を揺らぎ交換近似で扱い、この特異なバンド構造に起因するフェルミ面のネスティングが、水を挿入していない場合の3次元磁性の起源にもなっていることをつきとめて来た。今年度はNa_xCoO_2の大きな熱起電力の起源について研究し、この物質の特異なバンド形状(プリン型バンド形状)が大熱起電力と小電気抵抗両立、すなわち大きな電力因子の起源であることを示した。昨年度までの研究と併せ、コバルト酸化物における超伝導・磁性・熱電効果という興味深い三つの現象が統一的に理解できたことになる。 2. Pr_2Ba_4Cu_7O_<15-δ>の超伝導は通常の銅酸化物高温超伝導体のようにCuO_2の層状構造が起源ではなく、二重鎖構造が原因であると考えられている。我々は昨年度からこの物質に対して、第一原理バンド計算をもとにした微視的模型を構築し、揺らぎ交換近似を用いて超伝導の可能性を調べてきた。その結果、複数のフェルミ面間のネスティングに起因したスピンの揺らぎを媒介として、非従来型超伝導が起こることがわかった。また、電荷揺らぎを引き起こす最隣接相互作用の効果により、実験的に得られているT_cのδ依存性が理解できることもわかった。さらに今年度は揺らぎ交換近似の結果の妥当性を検証するために量子モンテカルロ法による計算を行った。その結果、quarter-filled近傍では揺らぎ交換の結果と整合する結果が得られる一方、half-filled近傍ではモット転移に近づくことによる明確な差異が見いだされた。
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