2006 Fiscal Year Annual Research Report
低温STMによる強相関物質の本質的不均一性および局在性に関する研究
Project/Area Number |
17540342
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松田 梓 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40386587)
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Keywords | 強相関系 / 高温超伝導体 / 層状Cu酸化物 / 層状Co酸化物 / 不均一状態 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き(1)Bi系Co酸化物、(2)Bi系高温超伝導体の研究を行い、さらに(3)MgB2超伝導体の研究を開始した。(1)Bi系Co酸化物については、低温STM測定から、電荷ストライプに対応する不均一状態が存在する可能性を指摘した。今期の研究では、その存在を確認すべく、a.統計性を上げるため多くの試料での測定、b,不均一状態が電子起源か、Bi-O面変調構造の様な格子起源によるかを判断するためキャリア数(電子数)を減少させる試み、を行った。a.多くの試料による測定の結果、3種類の密度波のうち2つについては存在に確証が得られたが、1つは、まだ確認できていない。一方、b.キャリア数を減少させる試みは成功し、常温から絶縁体になる試料が作成できた。これにより不均一状態の変化が確認できたが、不均一が電子起源か、格子起源かに関しては確証を得るに至っていない。(2)高温超電導体に関しては、最適ドープBi-2223の不均一状態の観測に成功し、同じ最適ドープBi-2212に比べてはるかに不均一が小さいことが明らかになった。これは、伝導層の次元性の増加と矛盾せず、高温超伝導におけるgapの不均一は、超伝導転移温度を減少させる可能性が高いことがわかった。以上の成果は、2007年春の物理学会で発表した。また、Tcより高い温度で状態密度に観測される擬gapも不均一を示すことが知られている。Tcの低い強くunderdope試料の作成に成功し、Tcより十分高い温度で測定が可能になり、そこでは擬gapの不均一が見られないことがわかった。従って、擬gapの不均一は、超伝導gapの不均一の為に間接的に生じた現象である可能性が指摘される。
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