2005 Fiscal Year Annual Research Report
溶融貴金属・ハロゲン混合系の動的構造と電子状態の第一原理分子動力学計算
Project/Area Number |
17540359
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
下條 冬樹 熊本大学, 理学部, 助教授 (60253027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安仁屋 勝 熊本大学, 理学部, 教授 (30221724)
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Keywords | 溶解塩 / 貴金属 / ハロゲン / カルコゲン / 液体 / 第一原理計算 / 分子動力学法 / シミュレーション |
Research Abstract |
第一原理分子動力学法による計算機シミュレーションを用いて、溶融CuI、溶融AgI、溶融(超イオン伝導体)Ag_2Seの構造と結合状態を調べた。 まず、溶融CuIの計算より、(1)正イオン間(Cu-Cu)の第一近接距離が異種イオン(Cu-I)間の距離と同程度であること、(2)この特異に短い正イオン間距離により、正イオンの空間分布に大きな密度ゆらぎが生じていること、(3)この密度ゆらぎの空間スケールに対応して、k=1Å^<-1>付近の波数に静的構造因子S(k)のピーク(FSDP)が存在することを明らかにした。また、(4)各イオン間のbond-overlap populationより、異種イオン間だけではなく正イオン間にも、共有結合的な相互作用が働いていることも分かった。つまり、Cu-Cu間には、従来考えられているようなクーロン反発相互作用だけではなく、電子を共有することによる引力的な相互作用が働いており、これが特異に短い正イオン間距離を与えている。この共有結合的な相互作用には、Cuの3d電子はほとんど関わっておらず、4s,4p電子が主に寄与している。 溶融AgI中の凝集機構も溶融CuIと同様である。両者の違いは、貴金属原子からヨウ素への電荷移動の大きさ、つまり、イオン性の強さである。溶融AgIの方が、溶融CuIに比べて、電荷移動が大きく、イオン性が強い。これに関連して、正イオン間の共有結合的な相互作用は、Ag-Ag間の方がCu-Cu間よりも弱く、Agの密度ゆらぎもCuに比べて小さい。 Ag_2Seの溶融相と超イオン伝導相においても、AgI、CuI中と同様の特異な正イオン間相互作用が見られる。特に、超イオン伝導相では、Ag間の引力がAg同士の相関運動を引き起こし、これが融点以下での高いイオン伝導度の要因になっていると考えられる。
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Research Products
(8 results)