2006 Fiscal Year Annual Research Report
溶融貴金属・ハロゲン混合系の動的構造と電子状態の第一原理分子動力学計算
Project/Area Number |
17540359
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
下條 冬樹 熊本大学, 大学院自然科学研究科, 助教授 (60253027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安仁屋 勝 熊本大学, 大学院自然科学研究科, 教授 (30221724)
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Keywords | 溶融塩 / 液体 / ハロゲン化物 / 貴金属 / 第一原理計算 / 分子動力学法 / 理論 / シミュレーション |
Research Abstract |
溶融貴金属・ハロゲン混合系中での特異な貴金属イオン間相関をもたらす凝集機構を明らかにする目的で、昨年度に引き続き第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションによる研究を行った。本年度は特に、溶融AgIに注目し、構造と電子状態の圧力依存性を調べた。高圧下における溶融AgIに対しては、最近、X線散乱やX線異常散乱による実験的研究が盛んに行われており、本研究はそのような実験を行っている研究者との密接な共同研究の下で遂行された。得られた主な研究成果は以下の通りである。 1.第一原理計算により得られた静的構造因子の圧力依存性は、20GPaまでの広い圧力領域に渡りX線散乱実験の結果を非常に良く再現する。これは、理論計算の妥当性を示す。 2.部分構造の解析を行い、高圧においても異常に短い正イオン間相関は保持され、溶融相では固体相とは異なり、20GPa程度の圧力まではNaCl的な構造は現れないことを明らかにした。 3.圧力増加に伴い、Ag-AgやAg-I間距離に比べ、I-I間距離が顕著に減少することが分かった。これは、X線散乱実験により得られている全動径分布関数における4Å付近のピークの圧力依存性がI-I相関によることを示す。 4.原子間距離、配位数の圧力変化より、5GPa程度の圧力において構造の圧力依存性に定性的な変化が見られることが分かった。Mulliken電荷、overlap population等の解析を行い化学結合の観点から調べることにより、低圧では結合状態があまり変わらずに体積収縮が起こるのに対し、5GPa以上ではイオン間の結合が弱くなりイオン性が増していくことを解明した。
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