2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540363
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
香取 眞理 中央大学, 理工学部, 教授 (60202016)
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Keywords | ランダム行列 / 非平衡統計物理 / 非衝突拡散過程 / 時間・空間相関関数 / 非整数階微積分 / 量子ウォーク / 量子拡散現象 / ブラウン運動 |
Research Abstract |
1.ランダム行列理論は、成分が乱数で与えられる行列の固有値の分布に対する理論であり、元来は静的な統計理論である。しかし、行列の各成分をブラウン運動などの確率過程とすると、行列に値をとる拡散過程が定義され、その固有値の運動によって長距離相互作用する1次元上の多粒子系の確率過程を記述することができる。この長距離相互作用は強い斥力であり系は非衝突粒子系となる。ランダム行列理論を応用して、多粒子系のダイナミクスを議論することができるのである。特に時間的に非斉次な確率過程は非平衡統計物理学模型として興味深い。我々は、「一般化された彷徨過程」という2つのパラメータを持つ時間的に非斉次な拡散過程に非衝突条件を課した粒子系を定義し、その時間・相関関数をランダム行列理論を応用することによって厳密に定めた。この結果を用いることにより、粒子数無限大の熱力学的極限をとることに成功し、時間的に非斉次で空間的にも非一様な非平衡無限粒子系を導いた。この系の相互作用は積分核で指定されるが、それがRiemann-Liouvilleの非整数階微積分によって記述されることを明らかにした。この結果は、ランダム行列の一次元鎖に対するForresterらや永尾の結果を一般化したものである。(この結果はProbab.Th.Rel.Fieldsに掲載された。) 2.ランダム行列は半古典的な記述であるが、量子的な拡散過程を記述する模型として量子ウォークが多くの研究者の関心を集めている。量子ウォーク模型は「量子コイン」とよばれるユニタリー行列によってその動的な振る舞いが指定される。これがSU(2)の元で与えられる場合に、今野(横浜国大工学部)が量子ウォーカーの擬速度に対して長時間での弱収束定理を証明し、新奇な極限分布を導いた。我々はこの結果を、量子コインがWignerの回転行列で与えられる場合に拡張した。(この結果は論文投稿中。)
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