2008 Fiscal Year Annual Research Report
メゾ系における非平衡状態の大域的性質に関する力学系の方法を用いた解析的研究
Project/Area Number |
17540365
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田崎 秀一 Waseda University, 理工学術院, 教授 (10260150)
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Keywords | C*代数 / 特異連続スペクトル / Mittag-Leffler緩和 / 揺らぎ定理 / 非平衡相転移 / Peierls転移 |
Research Abstract |
成果は次の通り。(1)特異連続状態と相互作用する不安定系の緩和:離散状態が連続状態と相互作用すると離散状態は不安定化するが、前年度の研究で、連続状態のエネルギースペクトルが特異連続の場合、生存振幅がMittag-LeffIer関数で表されることなどを見出した。今年度は、フィボナッチ格子と相互作用する離散状態の生存振幅の時間発展を調べ、前年度明らかにした一般論が成立することを確認した。 (2)量子揺らぎ定理:様々な系で、ある物理過程においてエントロピー生成がΔSである確率と、時間反転過程において-ΔSである確率の分布関数は、簡単な関係式を満たす。これを、揺らぎ定理と呼ぶ。今年度は、大きな熱浴と相互作用する小さな量子系において、エネルギー輸送と粒子輸送に注目し揺らぎ定理を調べた。まず、揺らぎ定理の出発点となる測定過程を詳しく吟味した上で、エネルギー輸送と粒子輸送に関する確率分布を導入し、時間反転対称性によって確率分布の特性関数に課される条件を導いた。続いて、系と熱浴の相互作用が 十分長い時間一定に保たれる場合に、特性関数が不可逆過程の駆動力となるアフィニティのみで表されることを明らかにし、輸送係数の対称性を系統的に導出した。(3)C*力学系の非平衡統計力学:前年度までの研究を継続し、C*代数の方法で得られる非平衡アンサンブルと平均場近似を組み合わせ、非平衡パイエルス転移を調べた。これまでに電圧・温度を制御変数にした場合に一次、二次転移が可能であることを示したが、今回は、電流・温度を制御変数にした場合には秩序変数が温度一定の下で電流の一価減少関数となり、二次転移のみが生じることを明らかにした。さらに、寺崎らによって見出された電流による電荷秩序抑制現象を定性的に説明できることを明らかにした。(4)その他:ボアソン則に従わない可積分量子系のエネルギースペクトルの揺らぎについても調べた。
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