2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17540382
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸 秀紀 京都大学, 理学研究科, 助教授 (60216546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 研一 京都大学, 理学研究科, 教授 (80110823)
北畑 裕之 京都大学, 理学研究科, 助手 (20378532)
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Keywords | 両親媒性分子膜 / リン脂質膜 / 巨大ベシクル / 剥離転移 / X線小角散乱 / ラメラ-ラメラ相分離 |
Research Abstract |
生体膜の基本構成物質であるリン脂質は、水中で疎水基を内側に挟んだ二重層膜を形成する。そして生体内では二重層膜単層のマイクロメータースケールの小胞(巨大ベシクル)を形成し、細胞などの小器官となる。ところが単体のリン脂質を単に水に溶かすと、一般に繰り返し周期が60Å程度の多重層膜を形成するだけで、自発的に単層の巨大ベシクルを作ることはない。従ってリン脂質がどのような場合に巨大ベシクルを形成するのかその要因を明らかにすることは、生命現象を解明する上で、あるいはソフトマターの自己組織化を明らかにすると言う点で重要である。 本研究では以上のような観点から、合成リン脂質から巨大ベシクルを形成する方法として知られている「静置水和法」に着目し、その機構を解明することによってリン脂質の自己組織化の要因を明らかにすることを目的として研究を行った。 前年度までの研究に引き続き、我々はリン脂質の乾燥膜が水和してベシクルが形成される過程を、時分割X線小角散乱装置により調べた。これによると室温で液晶相にあるリン脂質DOPCは、水和から数秒以内にリン脂質乾燥膜の膜間が数Å増大し、いったん準安定状態に落ち着いてから徐々に膜がはがれていく事が分かった。そしてこの過程を剥離転移であると考えて、遷移確率から自由エネルギーの形状を推定した。これにより、乾燥膜からのべシクルの形成は最外層の膜のみに関しての有効立体斥力が数%増大するだけで起こりうる、と言うことを示した。また我々は塩を加えることにより浸透圧をコントロールして、2種類の面間隔を持つラメラ構造が共存する「ラメラ-ラメラ相分離」を示唆する結果を得た。
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Research Products
(6 results)