2007 Fiscal Year Annual Research Report
開放散逸系としての海洋・気候システムの熱力学的研究
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17540419
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
下川 信也 National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention, 水土砂防災研究部, 主任研究員 (40360367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
納口 恭明 防災科学技術研究所, 防災システム研究センター, 総括主任研究員 (50360368)
小澤 久 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (30371743)
佐久間 弘文 海洋研究開発機構, 地球環境フロンティア研究センター, グループリーダー (70359214)
松浦 知徳 防災科学技術研究所, 水土砂防災研究部(H20.4より富山大大学院理工学研究部), 総括主任研究員 (10414400)
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Keywords | 非平衡熱力学 / 非線形力学 / エントロピー生成 / 熱塩循環 / 台風 / 確率降雨 / 風成循環 / 粉粒体 |
Research Abstract |
本年度は、特に、以下の5項目の研究を行った。・密度差により駆動される熱塩循環におけるエントロピー生成最大の仮説の長期的な気候変動への応用について検討した。・台風の最大可能強度理論とエントロピー生成率最大の仮説との関係についてのデータ解析と理論的考察を行った。・長期的な気候変動の予測可能性に関わる問題の例として確率降雨の不確実性についての考察を行った。・風応力により駆動される風成循環の外力が季節変動する場合の挙動を調べる数値実験を行った。・雪崩などの粉粒体流動についての人工的粒子を用いた室内実験の結果の解析を行った。 その結果以下のことがわかった。・熱塩循環の不可逆的遷移のメカニズムとしてのエントロピー生成最大の仮説は、過去の大規模な気候変動だけでなく、近年問題となっている地球温暖化に伴う海洋循環の変動にも適用できる可能性がある。・1982年から2005年の客観解析データ及び台風経路データに基づく解析において台風の最大可能強度と台風の経路には統計的に有意な相関がある。この結果は、エントロピー生成最大の仮説と整合的である。・確率降雨の算出過程には、複数の不確実性が存在するが、数学的要因だけではなく物理的要因に基づく不確実性、特に、気候変動による不確実性が確率降雨の推定の誤差を増大させている。・風成循環において海洋循環が持つ固有の変動と外力としての風応力の変動との非線形相互作用によりカオス的挙動が現れる。特に、季節変化する外力の振幅の大きさに依存して周期的な現象がカオス的な振る舞いに発展すると考えられる。・粉粒体流動の先端にある特殊なパターンが形成される場合、その最終的な定常状態においては、より高い位置エネルギーから運動エネルギーへの変換率=より高いエネルギー散逸が達成されている。この結果は、エントロピー生成最大の仮説と整合的である。
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Research Products
(13 results)