Research Abstract |
2006年度は,淡路島と土岐の既存のデータと比較し,中央構造線の中新世の折れ曲がり角度を評価するために,高遠花崗岩中の石英のヒールドマイクロクラックの解析を行った,淡路島と土岐のヒールドマイクロクラックについては,概ねN-Sの最大圧縮応力場が復元されているが,高遠花崗岩の場合は,多少ばらつきが大きいものの,E-WからNW-SEの最大圧縮応力場が復元される.この結果から,中央構造線が伊豆弧の衝突に伴い,現在のなす角度(約80°)程度の折れ曲がりがあったことが想定され,換言すれば中央構造線は伊豆弧の衝突の前はほぼまっすぐに延びていたことが明らかになった.今後,この復元をより確かなものにするために,2007年度は高遠の南方,愛知県の新城トーナル岩,三重県の美杉トーナル岩のデータを解析するとともに,ばらつきが認められる高遠びデータを充実させて論文化したい. 一方,伊豆弧の衝突現場であり,自ら本州弧に衝突した丹沢トーナル岩のマイクロクラックデータについては,トーナル岩固結後まもなく形成されたヒールドマイクロクラックからも,それより後に形成されたシールドマイクロクラックからも,ほぼ同じNNE-SSW方向の最大圧縮応力場が復元された.また,従来の現在の応力場測定でも,ほぼ同様の応力場が復元されており,丹沢トーナル岩体が衝突後は,広域応力場がほとんど変わらずに,現在に至っていることが明らかになった.このことはフィリピン海プレートの移動方向,すなわち伊豆弧の衝突方向であるNE-SW方向とは異なるが,丹沢山地が衝突軸に対して東から南東に向かって弧を描いている事実は,その弧に直交する方向の最大圧縮応力場の存在が説明可能である.2007年度は,古応力解析について別な視点(小断層や岩脈)から,時代論も含む古応力場の歴史を明らかにするとともに,論文化する予定である.
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