2006 Fiscal Year Annual Research Report
含水鉱物-水和錯体-水蒸気系における水分子の同位体分別
Project/Area Number |
17540463
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
垣内 正久 学習院大学, 理学部, 助手 (60146321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲山 英之 学習院大学, 理学部, 助手 (00155889)
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Keywords | 同位体分別係数 / 水素同位体 / 酸素同位体 / 含水鉱物 / 結晶水和物 / 水和錯体 / ラマンスペクトル / 換算分配関数比 |
Research Abstract |
本年度より、結晶水和物の水素同位体比分析に加えて、その酸素同位体比分析にも着手した。過去の報告例から、硫酸塩や硝酸塩は結晶水を脱水する際に、結晶内の硫酸や硝酸イオンの酸素原子と結晶水の酸素原子が同位体交換反応をする可能性が指摘されてきた。そこで、酸素同位体交換反応が生じなく、かつ水素同位体分別係数の知見もあるコバルト、ニッケルおよび銅の塩化物結晶水和物の酸素同位体組成の測定から試みた。塩化コバルトおよび塩化ニッケルの六水和物および塩化銅二水和物の同位体比を以下に述べる二つの手法を用いて測定した。 一番簡便な水分子の水素および酸素同位体比測定法は、水素ガスおよび二酸化炭素とをそれぞれ同位体交換平衡に到達させて測定するという方法だが、それにはやはり数グラムの水が必要となる。しかし、真空ラインが不要で、直接質量分析計で平衡後の水素および二酸化炭素の同位体比を測定するだけで求められる。数十グラムの上記の塩化物結晶水和物を真空下で加熱脱水させ、この手法を用いてその水素および酸素の同位体比をそれぞれ富山大学理学部で測定した。 一方近年、少量のmg以下の有機化合物の軽元素同位体比を測定する質量分析計として、Isoprimeが開発された。このIsoPrimeは、Dual micro inlet systemによる高感度高精度同位体比分析、またContinuous flow分析にも広く対応できる。東京工業大学原子炉研において、前処理装置として元素分析装置を用い、これとIsoPrimeと繋げることによって酸素同位体比を測定した。無酸素状態で1ミリグラム以下の塩化物結晶水和物を、ヘリウムをキャリアーとしてオーブン中で熱分解させ、試料を完全にガス化させた。ガス化して生じた酸素はグラファイトと完全に化合させ一酸化炭素の形とし、ガスクロカラムを通して他のガスと分離させてIsoprimeに導入し、その酸素の同位体比を分析するという手法を用いた。酸素同位体比は一酸化炭素の質量ピークの28,29,30を三つのファラデーカップで同時に測定することから求めた。本手法は簡便法よりも精度の点で少し劣り、時に一酸化窒素(NO)のピークが生じることがあり、測定精度の向上にはまだ検討の余地がある。 塩化コバルト六水和物と塩化ニッケル六水和物の水素および酸素同位体比は、実験誤差の範囲で一致した。塩化コバルトと塩化ニッケルの六水和物の結晶構造はどちらも単斜晶系で同一なので、結晶水への水素および酸素同位体分別は、中心金属イオンの違いよりも、むしろ結晶構造が大きく寄与することが明らかとなった。また、塩化銅二水和物の結晶水は水素、酸素ともに塩化コバルト、塩化ニッケル六水和物より大きな同位体分別を示すことがわかり、相対的に塩化銅二水和物の結晶水は重酸素(^<18>O)に富み、重水素(D)に枯渇することが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)