2006 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー脱離法による孤立DNA塩基対とその水和クラスターの生成
Project/Area Number |
17550017
|
Research Institution | Graduate School, Yokohama City University |
Principal Investigator |
三枝 洋之 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 教授 (90162180)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立川 仁典 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 教授 (00267410)
|
Keywords | レーザー脱離 / DNA塩基 / 水和クラスター / ヌクレオシド |
Research Abstract |
本助成によりDNA塩基などの熱的に不安定な生体分子を気化するためのレーザー脱離法を開発した。本手法の特色は、塩基対生成や塩基水和クラスターを効率的に生成することができる点である。このレーザー脱離法を用いて、グアニン塩基の互変異性体の電子スペクトルを測定した結果、最も安定であるはずの互変異性体が観測されないことが明らかとなった。更にメチル置換したグアニンを用いて互変異性化を制御することでこれを確かめることができた。このことは、DNA中で存在するような安定な異性体は、電子励起状態の寿命は非常に短いことを示唆しており、DNA塩基が紫外線照射により損傷することを妨げている一因となっていると考えられる。 18年度は本レーザー脱離装置を改良し、グアノシンなどの糖鎖の結合したヌクレオシドの非破壊的気化と、更にその水和物を生成させることに成功した。その結果、これらの水和物の高分解能電子スペクトルを世界で初めて観測することができた。このスペクトルを糖鎖の代わりにメチル基で置換したメチルグアニンの水和物のスペクトルと比較することで、糖鎖に水和していることが示唆された。また2'-デオキシグアノシンの水和物の電子スペクトルはグアノシンの場合と異なることが観測され、水分子は糖鎖の水酸基に結合していることが明らかとなった。現在これら水和物の赤外振動スペクトルを測定し、高精度の量子化学計算と比較することで、微細水和構造を検討している。 本研究で開発したレーザー脱離法は、DNA塩基分子のみでなく多くの生体分子に適用できると考えられ、今後の飛躍的発展が期待される。
|
Research Products
(9 results)