2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17550020
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
尾関 博之 東邦大学, 理学部, 助教授 (70260031)
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Keywords | 受動分光法 / テラヘルツ帯 / 圧力パラメーター / アセトニトリル / 塩化水素 |
Research Abstract |
本年度は二年間の研究の最終年度である。まず昨年に引き続き、圧力幅で拡がったスペクトルの形状と強度が、本研究で確立した受動分光法により、定量性を持って測定できることを示す実験を周波数0.6THz帯で行った。アセトニトリルの回転スペクトルの形状パラメーター(圧力幅パラメーターγと圧力シフトパラメーターδ)を副回転量子数毎に初めて決定することができた。これらの実験から得られる形状パラメーターの精度は、より広範な圧力範囲で測定を行うことで、より向上することが期待される。本研究では0.3hPa〜30hPaという圧力範囲で測定ができた。これは従来の分光法では望めなかった測定範囲である。同様の測定を、塩化水素に対しても行ったが、これについては0.3hPa〜200hPaという広い圧力範囲のスペクトル形状を測定することができた。これらの成果については現在、Journal of Molecular Spectroscopyに投稿準備中である。 次に本手法の実効的な感度を調べるための実験を行った。十分な放射強度(数十ケルビン以上)を持つ試料気体のスペクトル形状測定には、テラヘルツ放射の受信時間(いわゆるONソース時間)として、1秒もあれば十分であるが、これを長くすればするほど微弱な放射スペクトルの観測まで可能になり、分光法としての応用範囲が広がっていくことが期待される。そこで、合計のONソース時間を10秒から徐々に長くしていき最長で数分程度まで試みたが、この積分時間を長くしていくとともに、実験に用いたテラヘルツ受信機システムの安定度の影響がスペクトルに現れることが判明した。現時点での最適条件は積分時間として数十秒であり、0.5ケルビン程度の信号まで検出可能であることが確認できた。 以上の実験は、全て茨城県つくば市の宇宙航空研究開発機構に設置されているテラヘルツ帯受信機システムを用いて行った。
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