2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間における水和イオンのミクロ構造に関する研究
Project/Area Number |
17550023
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山口 敏男 福岡大学, 理学部, 教授 (70158111)
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Keywords | ナノ細孔 / 水和イオン / XAFS / MCM-41 / X線回折 / 中性子散乱 / 相挙動 / 水素結合 |
Research Abstract |
本研究では、細孔径が均一で親水性界面をもつMCM-41と疎水性界面をもつ活性炭(ACF)中の水、メタノール、アセトニトリル、および種々の電解質水溶液の構造と性質を、DSC、FTIR、X線回折、中性子散乱により明らかにした。 (1)MCM-41 C10(細孔径21Å)、C14(28Å)、Cl8(37Å)中に単層およびキャピラリー凝縮で吸着した水分子は界面のシラノール(siOH)基と強い水素結合(O-O距離2.6Å)を形成し、水素結合が歪んでいることが明らかになった。また、C10およびC14中の水分子の並進拡散係数は細孔径が小さくなるにつれて減少し、バルク水の約半分程度であることがわかった。 (2)MCM-41C10およびCl4細孔中に吸着したメタノール分子はシラノール基界面と強い水素結合を形成しており、界面に吸着したメタノール分子の構造と動的性質は細孔径や温度に依存しない。一方、キャピラリー凝縮したメタノール分子はバルク同様に鎖状構造を形成するが、水素結合は大きく歪んでいる。 (3)MCM-41C14中に閉じ込めたアセトニトリル分子はシラノール表面と双極子-双極子相互作用により弱いN-O結合(〜3Å)を形成している。細孔中のアセトニトリル分子の拡散係数はバルクより小さいが、活性化エネルギーは7〜12kJ/molで水より小さい。 (4)MCM-41C10細孔中にキャピラリー凝縮で吸着した重水で、229K付近で低密度水から高密度水へのダイナミカルクロスオーバーが生じることが明らかになった。 (5)MCM-41C10,C14,C18およびACF中に閉じ込めた種々の電解質水溶液について、DSCにより熱挙動を、XAFS法により水和イオンの構造を決定した。細孔中ではイオンの表面電荷密度が増加すると融点は降下した。細孔中の水和イオンの構造はバルクと類似していた。
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