2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17550032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
友田 修司 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30092282)
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Keywords | 有機化学 / タンパク質 / 化学物理 / 生体分子 |
Research Abstract |
1.溶媒中における反応化学種の構造解明と面選択性予測理論の構築 α位にσ-電子求引性置換基を持つ鎖状ケトンについて、LiAlH_4還元の分子軌道計算による選択性の理論予測を行った結果、従来提唱されてきたキレーション遷移状態モデルでは実験事実をまったく再現できず、選択性の説明ができないことが見出された。 そこで溶媒であるエーテル分子が反応機構に関わってくる可能性を検討し、ジメチルエーテル分子が配位した新しい遷移状態モデルを考案した。このエーテル配位遷移状態モデルを用いてLiAlH_4による還元反応の遷移状態を計算したところ、実験の傾向をかなりの精度で再現できた。すなわち、この新しい遷移状態モデルの妥当性が確認され、溶媒が面選択性に大きく影響を与えていることが示唆された。 2.タンパク質のフォールディング機構の解明を目指したタンパク分子内微弱相互作用の定量評価 タンパク質のフォールディング構造を担う最小単位でもあるペプチド結合は平面型の構造をとるため、シス形とトランス形の2種類の構造が存在する。しかし、自然界ではほとんどのペプチド結合がトランス形で存在しており、シス形より安定であることが知られている。一般的にこれは立体障害によって説明されるが、グリシンのように側鎖が比較的小さいアミノ酸では、立体障害では説明しきれない。 そこで、本研究ではこのトランス形優位性を理論的に解明することを目的とし、2種のペプチドモデル化合物についてシス形、トランス形で分子軌道計算プログラムを用いて構造最適化およびエネルギー計算を行ったところ、シス形、トランス形ともに最安定構造では主鎖が平面型の構造をとっており、2つの化合物でそれぞれ4.6kcal/molおよび3.9kcal/molトランス形がより安定であることが明らかとなった。また、これらの構造についてNBO解析を行った結果、ペプチド結合周りの電子の非局在化による安定化エネルギーがトランス形優位性の起源となっている可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)