2006 Fiscal Year Annual Research Report
溶液中でのジフェ二ルボロンカチオンの構造とその機能性発現の解明
Project/Area Number |
17550039
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Research Institution | Kyushu University : |
Principal Investigator |
藤尾 瑞枝 九州大学, 先導物質化学研究所, 研究員 (10029887)
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Keywords | ボロンカチオン / B-11 NMR化学シフト / ルイス酸性 / ab initio理論計算 / ルイス酸触媒 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、ジフェニルボロンクロリドを原料にして、室温で安定なより強いルイス酸性を持つジフェニルボロンカチオンを探し、その構造、安定性、電子状態をB-11,C-13 NMRにより解明し、ab initio理論計算による検証を行った。その結果、求核性のないジクロロメタン中において、ジフェニルボロンクロリドと置換ピリジンとのadductの強いルイス酸(SbCl_5等)によるイオン化により、これまでの中で最も強いルイス酸性を持つ三価のsp^2ボロンカチオンを生成させることができた。ただし、m-Cl以上の電子求引性のピリジンではカチオンはできなかった。したがって、求核剤のカチオン安定化が弱くなると三価のボロンカチオンは生成しない。求核性のある溶媒ニトロメタン中では、p-NMe_2ピリジンではsp^2ボロンカチオンが得られたが、置換基が電子求引性になるに伴いB-11 NMRシフト値は連続的に高磁場に移動し、m-Clピリジンではシフト値からニトロメタンが配位した四価のsp^3ボロンカチオンが生成したことがわかった。これは、求核剤と溶媒からの安定化の度合で変動する、裸のsp^2カチオンとニトロメタン配位のsp^3ボロンカチオンとの平衡が存在し、置換基の電子求引性が大きくなりピリジンからの安定化が小さくなるにつれて溶媒配位のsp^3カチオン側に移動すると説明できる。B-11 NMRの実験値から求めた平衡の値がab initio理論計算で求めたsp^2とsp^3ボロンカチオンの安定エネルギーの差と一致することから、両カチオン間の平衡の存在が理論的にも支持された。溶媒と求核子の交換が起っている上のadduct-sp^2-sp^3カチオン系は、不斉触媒反応のサイクルの中間体群に相当するものであり、捕捉したボロンカチオンの理論最適構造を基に、不斉活性部位の立体構造および不斉誘起の発現因子の検討が可能である。
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Research Products
(3 results)