2006 Fiscal Year Annual Research Report
外部刺激に応答して開閉する金属錯体細孔のメカニカルな分子吸着に関する研究
Project/Area Number |
17550054
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
近藤 満 静岡大学, 理学部, 助教授 (80254142)
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Keywords | 化学刺激 / 結晶構造 / チャンネル構造 / 動的特性 / 小分子吸着 / 化学スイッチ |
Research Abstract |
温度に応答してチャンネル構造を変化させる[Ni(dps)_2(NO_3)_2]G(dps=ジピリジルスルフィド、G=ゲスト分子)について、ゲスト分子を種々のアルコール、あるいはジオール、アセトンなどに変化させた際の動的挙動の変化について検討を行った。その結果、ゲスト分子をプロパノール(PrOH)やメトキシエタノール(MeOEtOH)などに変化させると、分子量の増加に由来すると考えられる、転移温度の低下が観測された。さらに、ゲスト分子にPrOHを用いた場合には、[Ni(dps)_2(NO_3)_2]EtOHでは1段階であった構造転移挙動が2段階で観測された。そこで、この2つの構造転移について、低温での単結晶構造解析を行った結果、最初の転移では、室温では交互に配列していた一次元鎖がABCパターンで配列することが分かった。さらに、これに引き続いて発生した構造転移の結果、ABABパターンに再配列を起こすことが明らかとなった。このABABパターンの配列は、[Ni(dps)_2(NO_3)_2]EtOHで見られたものと同じであった。つまり、[Ni(dps)_2(NO_3)_2]PrOHは、構造転移の中間段階を検出したのでは無く、第三の新しい固体相をその中間段階に形成することが明らかとなった。 またMeOEtOHをゲスト分子に導入したニッケル錯体[Ni(dps)_2(NO_3)_2]MeOEtOHについても、[Ni(dps)_2(NO_3)_2]EtOHと同様の1段階の転移挙動を示したが、単結晶構造解析の結果、生成する上記の錯体とは異なることが明らかとなった。にも関わらず、この[Ni(dps)_2(NO_3)_2]MeOEtOHも、硝酸イオンの回転に由来するチャンネル構造の変化を示し、低温ではチャンネルが狭くなる、というゲスト分子のメカニカルな捕捉活性を発現した。 この年度の研究の結果、2段階転移という、新たな構造転移挙動と、構造転移による新しい固体相の発現を見いだすことに成功した。
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