Research Abstract |
平成18年度までは,温度に応答してチャンネル構造を変化させる高分子型金属錯体として[Ni(dps)_2(NO_3)_2、ROH型(dps=4,4'-ジピリジルスルフィド)の合成とその動的特性の解明を行ってきた。平成19年度は,新たに水素結合を介して高分子構造を有する金属錯体を合成し,物理刺激,及び化学刺激に応答して固体構造を変化させる動的金属錯体の合成に注目し研究を展開した。 平成18年度までに,4-イミダゾール酢酸(ima)が2つキレート配位したニッケル錯体[Ni(ima)_2(MeOH)_2](1)とこれを加熱真空処理することにより,メタノールが除かれた[Ni(ima)_2]の合成に成功した。1は,単核ユニットがNH…O=C分子間水素結合で連結することにより,六角形の一次元細孔を形成している。一方,2はアモルファスで,メタノールを接触させると,再び結晶性錯体1を再生する。 平成19年度は,このアモルファス2を出発物質に利用することにより,柔軟な水素結合で連結されたネットワーク構造を有する金属錯体の合成を検討した。金属錯体2に,ビスピリジン型架橋配位子4,4'-ビピリジン,4,4'-ビピリジルスルフィド,および4,4'-ビピリジルプロパンを反応させることにより,水素結合と配位結合で連結した高分子骨格を有する金属錯体[Ni(ima)_2(L)](L=ビスピリジン型架橋配位子)が生成することを見いだした。 一方,アモルファス2にエチレングリコール(ethgl)を反応させることにより,単核ユニットが水素結合を介して高次元に連結した金属錯体[Ni(ima)_2(ethgl)が生成し,しかもこの反応は,固体状態でも容易に進行することを見いだした。これらの研究により,アモルファス2を出発物質として,様々なネットワーク型金属錯体を系統的に合成できることを明らかにした。
|