2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17550062
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
馬越 啓介 長崎大学, 工学部, 助教授 (20213481)
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Keywords | パラジウム / 混合金属錯体 / 異性化反応 / 反応速度 / 白金 / 11族元素 / 発光 / ピラゾール |
Research Abstract |
嵩高い置換基を有する3-t-ブチルピラゾラール(3-^tBupzH)と[PdCl_2(CH_3CN)_2]との反応により,分子内の水素結合により安定化した二核錯体が生成するが,この二核錯体にAu(I)イオンおよびAg(I)イオンを作用させることにより混合金属四核錯体[Pd_2M_2(μ-3-^tBupz)_6](M=Au,Ag)が生成した.非対称な構造の配位子を用いているため様々な幾何異性体が生成する可能性があるが,主として得られるのは,Pd…Pd間を架橋している配位子の置換基の向きのみが異なる2種類の幾何異性体(HH=head-to-head ; HT=head-to-tail)であることが分かった.溶液中では[Pd_2Ag_2(3-t-Bupz)_6],[Pd_2Au_2(3-t-Bupz)_6]ともHT体とHH体の間に1次の平衡が存在し,いずれの場合にも平衡状態ではHT体の濃度がHH体の濃度より高くなることも分かった.^1H NMRにより各温度での異性化反応を追跡し,活性化パラメーターを求めることに成功した.その結果,[Pd_2Ag_2(3-t-Bupz)_6]の異性化速度は[Pd_2Au_2(3-t-Bupz)_6]に比べてk_tが約10倍速く,k_2は約5倍速いことが分かった.また,[Pd_2Au_2(3-t-Bupz)_6]に銀イオンを添加すると異性化反応が加速され,添加する銀イオンの濃度に異性化速度が依存していることも分かった.さらに,低温でのNMR測定の結果より,Pd…Pd間を架橋している配位子の異性化反応に比べてAu^IイオンとAg^Iイオンの交換は極めて速いことが分かった. 一方,3,5-ジメチルピラゾール(Me_2pzH)とPt(II)イオンの反応により生成する単核錯体を塩基で処理すると,分子内水素結合により安定化された二核錯体が生成する.この二核錯体は紫外光を照射すると黄色に発光する.この二核錯体に銀(I)イオンまたは銅(I)イオンを作用させると,分子内水素結合に関与しているプロトンが銀(I)イオンまたは銅(I)イオンに置換され,白金-銀および白金-銅錯体がそれぞれ生成する.これらの混合金属錯体に紫外光を照射すると,白金-銀錯体は水色,白金-銅錯体はオレンジ色に強く発光することが分かった.これらの錯体のDFT計算を行ったところ,LUMOが特徴的で,Ptの6p軌道とAgの5p軌道またはCuの4p軌道の全てがin-phaseで重なった軌道であることが分かった.混合金属錯体の発光寿命はマイクロ秒のオーダーであり,^3MMからの発光であると考えられる.
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Research Products
(5 results)