2006 Fiscal Year Annual Research Report
ロジウム錯体の2電子移動反応を用いた光駆動型分子バネに関する基礎的研究
Project/Area Number |
17550063
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
篠崎 一英 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 教授 (40226139)
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Keywords | ロジウム錯体 / 光構造変化 / 水素吸着 / 分子デバイス / 固体反応 |
Research Abstract |
本研究ではナノテクノロジーに対する化学的なアプローチとして、金属錯体分子を用いたデバイス開発を目的とした。特に[Rh(bpy)_2H_2]+錯体の酸化還元反応について、配位構造の変化時の配位子の動きを利用して、ナノスケールでのスイッチング素子(分子スイッチ)とバネ(分子バネ)への応用を目指した。ロジウム錯体は、水素ガス吸収により色が[Rh(bpy)_2]+(紫色)から[Rh(bpy)_2H_2]+(透明)に変化する。この構造変化は約1μ秒で起こることがレーザーポトリシスから明らかとなった。また、水素を放出して[Rh(bpy)_2]+に戻る速度はレーザーのパルス幅程度であり、ロジウム錯体は光によってON/OFF可能なデバイスとして働くことが分かった。さらに、固体状態でもこの構造変化を観測することができた。薄い黄色の[Rh(bpy)_2H_2](ClO_4)錯体粉末に光照射すると、紫色の[Rh(bpy)_2]+の生成が確認された。また、水素ガス雰囲気下では紫色が消え、もとの[Rh(bpy)_2H_2](ClO_4)の生成を確認し、錯体を用いた分子デバイス・スイッチの可能性を示した。結晶中では分子どうしのパッキングや立体的な制約があるため、固体状態での分子構造変化が起こることは考えにくいが、本研究ではRh錯体以外にも、発光スペクトルを用いて固体状態でのガス吸脱着に伴う錯体分子構造変化を数例見出し、固体状態で結晶構造あるいは分子構造変化が起こり、この変化が光で制御できることを示した。そのひとつとしてルテニウム錯体は固体状態で有機溶媒分子や水分子を吸収し、その発光を暗い赤から鮮やかな橙色に変化する。その発光スペクトルが時間とともに長波長シフトすることから、固体中での溶媒緩和が起こっていることが明らかとなった。また黄色発光を示す白金錯体は、すり潰すとその発光色が橙色に変化する。これは錯体結晶中で励起分子間のエキシマー形成によるものと帰属した。
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