2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17550066
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山田 康洋 東京理科大学, 理学部第二部・化学科, 教授 (20251407)
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Keywords | レーザー蒸着 / 鉄薄膜 / メスバウアー分光法 / 磁気配向 / 磁気異方性 |
Research Abstract |
まず、レーザー蒸発による鉄薄膜生成を10^<-2>Pa以下の真空中で行うための装置を製作した。Nd:YAGレーザーの第2高調波(512nm,200mJ/pulse)を凸レンズで集光して金属試料をレーザーアブレーションし、薄膜生成基板の温度制御(10〜600K)が可能な装置とした。この装置を用いて^<57>Fe濃縮鉄を照射し、レーザー蒸発した鉄原子をアルミ基板上に堆積させて鉄薄膜を生成した。鉄蒸着量や基板温度を様々な条件で変化させて薄膜試料を製作し、メスバウアー分光法による測定を行った。また、薄膜の表面形状は走査型電子顕微鏡SEMにより観察した。レーザー堆積法と比較するために、鉄線の抵抗加熱によって基底状態の鉄原子を生成し、堆積させた薄膜も同様に測定した。 鉄の蒸着量が多く、膜厚が十分に厚い場合にはα-Feの層が得られ、メスバウアースペクトルから鉄原子の磁気配向が見られた。抵抗加熱法により生成した鉄薄膜は基板に対して垂直に磁気配向するが、レーザー堆積法により得られた鉄薄膜は面内磁気配向となることがわかった。また、そのSEM画像から薄膜の結晶成長方向に差が見られ、抵抗加熱法では基板面に垂直方向に結晶成長するのに対して、レーザー堆積法では面内方向に結晶成長することがわかった。このことはレーザー蒸発した鉄原子の並進エネルギーが大きく、基板面上で十分に拡散しながら結晶成長するためと考えられ、磁気配向はα-Fe結晶の形状異方性によるものである。 次に、レーザー堆積法による鉄薄膜生成時の基板との化学反応をしらべた。AlとSiを基板として用いた場合、蒸着量の少ない試料では、基板中に鉄原子が拡散して常磁性となり、蒸着量が増大するにつれて次第に磁気成分が現れて内部磁場分布を持つようになることがわかった。また、基板温度が上昇するにつれて鉄原子の基板中への拡散が大きくなることが明らかとなった。
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