2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体試料の高分解能深さ方向分析を目指した小型低速C_<60>クラスターイオン銃の開発
Project/Area Number |
17560026
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
井上 雅彦 摂南大学, 工学部, 助教授 (60191889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志水 隆一 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (40029046)
佐藤 直幸 茨城大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (80225979)
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Keywords | C_<60>フラーレン / クラスターイオン / TOF |
Research Abstract |
有機薄膜・積層材料や生体試料のナノメートルスケールの深さ方向分析技術の需要が高まってきている。これに対して,従来行われてきたような希ガスイオンスパッタリングを適用すると,アトミックミキシングによる試料の損傷が激しく,分子結合状態の分析ができなくなってしまう。そのため,クラスターイオンを用いたソフトスパッタエッチングが提案されている。本研究では,C_<60>分子をイオン化することで,炭素原子60個の安定なクラスターイオンが得られることに着目し,市販の表面分析装置に取り付け可能な小型のクラスターイオン銃を開発することを目的とした。 本年度は,まずイオン銃の核となるイオン源部分の最適化に取り組んだ。グラファイト製るつぼにC_<60>粉末試料を入れ,これをPID制御を施した熱フィラメントにより加熱し,昇華したC_<60>蒸気を電子衝撃によりイオン化した。このとき,残留ガスによるイオンとC_<60>イオンを分離検出するために電子衝撃用電圧をチョッピングし,飛行時間の差によってC_<60>イオンのみを検出できるようにした。この実験により得られた飛行時間スペクトルの解析から,C_<60>の昇華はるつぼ温度500℃付近から始まり,確かにC_<60>はその分子構造を保ったまま昇華し,電子衝撃によっても壊れることなく,安定なC_<60>^+イオンとなることが確認された。なお,600℃を越えるとC_<60>の解離が始まることもわかった。従ってるつぼの最適温度範囲は500℃から600℃と大変狭く,精密な温度制御が必要であることがわかった。電子衝撃電圧については,今回実験に用いた装置の能力の範囲では150Vあたりが最もイオン生成効率が高くなることがわかった。
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