2005 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリアべん毛モータ分子揺動利用型潤滑・自己組織化機構のナノマシンへの応用
Project/Area Number |
17560115
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中野 隆 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 助手 (00183517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桃園 聡 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (70262300)
吉村 英恭 明治大学, 理工学部, 教授 (70281441)
相沢 慎一 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (50222451)
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Keywords | べん毛モータ / 拡散電気二重層 / バイオナノマシン / 非古典的潤滑機構 / 自己組織化 / PLリング / ユニバーサルジョイント / トライボロジー |
Research Abstract |
この研究の目的は生きているナノマシンというべきバクテリアべん毛モータの潤滑・駆動機構及び自己組織化機構を解明し,現在開発の基礎研究が着手され始めたナノマシンの駆動及び潤滑機構のモデルとして応用することにある. 我々のこれまでの研究によって,ナノマシンの世界では,従来の機械工学での潤滑戦略が有効でないことがわかってきた.即ち従来非常に有効であると考えられた流体潤滑が,ナノマシンの世界では効率的な潤滑法ではないことが判明した.ところがバクテリアべん毛モータ及びモータ軸受部の構造は,従来の機械式モータおよびジャーナル軸受と同じ構造をしているように見える.(軸受け部はPLリングと呼ばれている)またこのべん毛モータは高等生物のように分化によって形成されるのではなく,細胞内で作られた部品が自動的に組み立てられる,即ち自己組織化によって自発的に形成される. このべん毛モータの潤滑・駆動機構および自己組織化機構解明がナノマシン技術を開発するためのキーポイントと考え,まずバクテリアべん毛モータの潤滑機構を解明するためにまず理論的な解析を行った. 結果最初に流体潤滑理論を用いてべん毛モータ軸受部の解析を行った.この解析の結果からやはり,バクテリアべん毛モータの軸受は従来の機械の軸受と構造的には類似しているが,軸と軸受けに働く大きな分子間力を相殺する為に実際は物理的に異なった潤滑機構を利用している可能性が高いことが示された.そこで,従来の流体潤滑に替わり疎水コロイドの安定性の源泉である拡散電気二重層の効果を用いた潤滑機構(DVLO理論)の負荷容量計算の定式化を行った.そしてこの拡散電気二重層の効果によってPLリングに要求される負荷容量を生成できることを示した.また電荷の非対称性の影響についても調べ対称な電荷分布が効率の良い負荷容量を生成することが分かった. この研究によって生物の潤滑機構をナノマシンの潤滑機構に応用できる可能性を示すことが出来た.べん毛モータには,この他にも機械のユニバーサルジョイントの役目を果たすフックと呼ばれる機構が存在する.このフックが如何にしてユニバーサルジョイントの役目をしているかについての基礎研究及び,プロトンチャンネル及びナトリウムチャンネルを有するべん毛モータ駆動機構の比較を行った.またこの潤滑機構と潤滑機構に拮抗する分子間力の役割を肯定的に検討し,べん毛モータが自発的に組立てられる機構,即ち自己組織化機構に関する知見を得た.
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Research Products
(2 results)