Research Abstract |
液体燃料の噴霧燃焼は,燃料の微粒化条件に起因する燃料噴霧の平均粒径や粒度分布などの噴霧特性と,流れ場の特性が相互に影響を及ぼしあいながら蒸発・燃焼が進行する反応性二相流であるため,依然不明な点が多い.このような複雑な現象を解明するために,よどみ点付近に噴霧火炎を定在化することが可能な,対向流場を用いた研究が数多く行われてきた.しかしながら,燃料噴霧の粒度分布は,燃料噴射量等の他の噴霧特性と独立して操作することが困難であるため,燃焼特性に与える影響については,その詳細を解明するには至っていない.特に噴霧燃焼場におけるすす生成過程は,物理的過程と化学的過程が影響しあう複雑な現象であるため,燃料噴霧特性が生成過程に与える影響は,十分に解明されたとはいえない. そこで本研究では,燃料供給量を一定に保ち,均一な粒径分布を持つように操作した燃料噴霧を層流対向流場に添加し,噴霧火炎中に生成されるすすを計測することで,液体燃料噴霧の粒度分布が噴霧燃焼に与える影響を解明することを目的とした.液体燃料の噴霧特性は粒度分布制御技術を利用して行い,すす生成特性を各噴霧条件においてTime-Resolvedレーザ誘起赤熱法,およびレーザ画像干渉法(ILIDS)とレーザ誘起赤熱法の同時計測によって評価した.具体的には,複雑かつ微視的なすすの生成・成長過程を解明する目的から,噴霧火炎がよどみ流場に形成され基礎的な燃焼現象の観察が可能な対向流噴霧火炎バーナに,噴霧特性の平均粒径や粒径分布を操作した燃料噴霧を添加し,各条件における噴霧火炎を対象としてTime-Resolved-LII計測,およびLIIとILIDSの同時計測を行い,燃料噴霧の粒度分布が噴霧火炎中におけるすす生成過程に与える影響を観察し,以下の結論を得た. (1)輝炎領域と青炎領域の生成は密接に関係しており,噴霧特性によって大きく影響を受ける. (2)層流対向流場に形成される燃料噴霧特性を任意に操作した噴霧火炎中において,燃料噴霧の液滴平均粒径が大きくなるほど,すす生成領域の発生頻度,すす生成領域の平均面積が大きくなり,すすが形成される位置がガス平面火炎に近くまで下がる. (3)すす粒子の成長は,気流に沿ってバーナ外側に移動していく過程で小粒径のすす粒子が合体・凝集することで,大粒径のすす粒子に成長していく. (4)環状に分布するすすの生成領域において,その内部には液滴が存在しており,バーナ中心軸付近を降下する噴霧液滴が新たにすす生成領域に落下し,そこで噴霧液滴の温度上昇および蒸発潜熱による吸熱のために熱燃反応強度が低下して,火炎およびすす生成領域が分断される.
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