Research Abstract |
複数のウェアラブル情報機器を人体上に分散配置し,人体上及び人体周囲でネットワークを構成するPAN(Personal Area Network)の構想に加え,人体内埋め込み型医療デバイスと外部医療機器との生体情報の無線通信や遠隔治療に対する期待も高まっている.しかし,人体表面や体内での信号伝送機構や伝送路特性についてはほとんど未解明の状態にあり,通信方式の最適化も大きな課題である.本研究では,低電力,高速なUWB(Ultra-Wideband)通信を人体伝送路への適用を目指し,(1)人体のUWB伝送路特性のモデリング,(2)伝送可能な周波数帯でのUWB通信のためのインパルス形状,アンテナ種類及び変復調方式の最適化を行う. 平成17年度では,まず,人体表面でのUWB伝送路特性と人体内でのUWB伝送路特性の解明を実施した.人体組織の電気定数をネットワークアナライザと誘電体プローブにより測定し,UWB全帯域をカバーできる人体表面伝送のための人体数値モデル及び人体体内と外部との無線伝送をするための人体数値モデルを構成した,これらの数値モデルに対して,人体表面伝送では電極型アンテナ,人体内部と外部との無線伝送では楕円型ディスクダイポールアンテナを想定し,UWB伝送路の周波数特性(振幅特性,群遅延特性)の数値解析を行った.なお,数値解析法としては,人体組織の周波数分散性をデバイの分散式で表し,それを時間領域でFDTDアルゴリズムに組み込むように,いわゆるFrequency-Dependent FDTD法を用いた.解析結果により,人体表面での伝送では,帯域50〜200MHzのUWBパルスを用いれば,20cmの距離で-20dBの減衰と1.5ns前後の群遅延という平坦な伝送特性,人体内部から外部への伝送では,帯域3.1〜5GHzのUWBパルスの採用で,-50dBの減衰と0.6nsの群遅延という平坦な伝送特性が得られることを明らかにした.また,UWB-1R(Impulse Radio)伝送を想定し,代表的な変調方式を採用したときの誤り率特性を導出した.その結果,何れの場合においても,相関係数が0,85以上で,十分に通信が可能であることを示すことができた. 平成18年度では,17年度の成果を踏まえ,人体UWB通信のためのアンテナと変復調方式の最適化を行う.
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