Research Abstract |
近年,部材相互の接合部の溶接継手や応力集中部などで自動車荷重が原因と考えられる疲労損傷事例が報告されるようになってきており,平成14年3月の「道路橋示方書・同解説」(以下,道示)では疲労も設計時に照査すべき限界状態の一つになった.具体的な照査方法が記載された「鋼道路橋の疲労設計指針」(以下,指針)では,疲労設計荷重を道示に規定されたT荷重とし,疲労照査に用いる疲労損傷度を算出することとしている.その際,実交通流による疲労損傷度との相違をなるべく無くすため,様々な検討結果に基づき設定した補正係数を考慮することとしているが,全体的にどの程度の精度を有するかは明確ではない.そこで今年度は,シミュレーションにより着目部位の疲労損傷度を算出し,指針の規定に基づく計算結果と比較した. 対象構造は,2車線道路橋の上部構造とし,支間長L(m)の単純桁橋の支間中央部,3径間連続桁橋の中央径間中央部および側径間中央部に着目した.疲労損傷度を求めるためのシミュレーション手法は,これまでの研究と同様であり,大型車混入率,時間交通量Q,車両速度V,支間長L,車線モーメント比,車線による大型車交通量の偏り,大型車中の車種構成比率をパラメータとして変化させた. その結果,シミュレーションによる疲労損傷度と指針の規定に基づく疲労損傷度の値にはそれほど大きな差は無く,概ね一致した.また,指針の規定に基づき算出した疲労損傷度が危険側になるケースは連続桁で多く,全体で10%程度であった.さらに,単純桁橋においては,車間距離が短くなるほど,指針の規定に基づく疲労損傷度はシミュレーションの結果に対して相対的に高くなる一方,連続桁橋の場合は逆の傾向を示した.
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